I

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ラスバーンの生贄はその身だけでなく、全てを捧げなければならない。 サンテガルには妹がいた。アイリーンという無垢で可憐な王妃である。 サンテガルが成人を迎えた日の夜明け、妹のアイリーンを部屋へ呼び出した。手筈は整っていた。サンテガルは何度も、何度もアイリーンに謝り続けた。アイリーンは何故兄が瞳を赤くする程泣き明かしているのか、わからない様子だった。 部屋に敷かれた絨毯の下に、私が描いた魔法陣が隠してあった。古文書に記された生贄の紋様である。サンテガルはアイリーンを抱きしめて、暗闇に潜んでいた私にコクリと頷き、合図を送った。私はそっと手をかざし、魔法陣に魔力を巡らせた。 『青の炎、生贄を焼き尽くし、聖灰を生む』 生贄の為の生贄。愛する妹アイリーンを捧げる事がサンテガルに課せられた最初の代償だった。
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