I

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アイリーンは燃え移ることのない魔法の炎に焼かれた。サファイアの様な青い炎がアイリーンの身を包んだ。悲鳴を上げてもがくが、サンテガルが強く抱きしめた。 アイリーンが燃え尽きる頃には骨も残らず灰になっていた。そしてサンテガルの額の刻印が顔面全体に大きく広がっていた。 「悲惨な運命よ、アイリーン。本当にすまない事をした。許してくれアイリーン、許してくれ!」 遺灰を握りしめたサンテガルは灰の上に覆い被さり、永遠に失われた妹の温もりを探して涙した。 サンテガルの父であり、病に伏せる国王アーヘンはアイリーンの死を国民に伏せた。あくまでもサンテガルは英雄なのである。反乱の動機になりうるこの残酷な運命は口外出来るはずも無かった。 そして次なる代償を私が打ち明けるとサンテガルは錯乱し、私の首を絞め倒した。狂気と殺気が入り交じった鬼の目をして私を睨んでいた。 半ば私と共に妹を焼き殺してしまったのだ。喪失感、罪悪感、まだ若く満たないサンテガルにとって苦痛以外の何ものでもなかった。しかし、時間が無かった。遠い東の国で突如蔓延した不治の病。どこからか溢れ出てきた大量の鼠の群れ。隣国の激化する領土争い。世界はラスバーンの手によって着実に混沌へ向かっていたのだ。
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