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私とサンテガルは国王のいる宮殿を訪れていた。朝の支度に忙しくする使用人に騒がれぬよう、サンテガルには黒いマントと仮面を纏わせ、邦人の来客を装わせた。
国王の寝室へ忍び込むと国王は既に私たちを待ち構えていた。サンテガルの刻印の意味を知る国王はこの時を察していた。
「父上、私です。サンテガルです。今この仮面を取りますが、どうか声を立てないで下さい」
サンテガルは静かに仮面を外し、変わり果てた容姿を国王へ向けた。国王は驚く事もなく、深く頷くとサンテガルを迎え入れた。
「ガル。我が自慢の息子よ。勇ましい姿となったな。お前がこの様な姿となったのならば、運命を受け入れたのだな」
「父上、王の血筋が途絶える事となり、申し訳ありません。何の罪もないアイリーンまでも」
サンテガルは赤い瞳から涙を流した。その涙は夜の様に黒く、マントの袖に落ちると生地を溶かし穴を空けた。国王も焼き死んだ娘を想ってか涙を流した。サンテガルとは違い、透き通った涙だった。
「それが神の与えた試練。そして憎き魔王の陥れし誘いだろう。お前が世界を救うのだ、英雄には何れしも代償が付き纏うものだ」
一呼吸置いて、国王は言った。
「次は私の番だ。運命を受け入れよう、誇らしいお前の様に」
国王は灰となり、サンテガルの身体に新たな刻印が刻まれた。サンテガルは小さな薬瓶に灰を入れた。麻の紐に灰の入った三つの小瓶を吊るして首に下げた。父アーヘン、妹アイリーン、許嫁リンダの遺灰だった。
こうして、私たちは国を後にし、魔王ラスバーンを封印すべく旅を始めた。
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