II

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II

旅の道中で私たちは三人の戦士と出会い、旅の道連れとして引き連れた。三人ともここ数年の間に出会った者たちだった。 一人目は流浪の狩人アッシュ。ひょうきん者で無類の女好きだが弓の腕は一流で木から落ちるリンゴを容易く射抜ける射手だった。根拠の無い自信が取り柄の威勢の良い若者だが、旅の道中で魔物を討つとそれを餌話に酒場で無知な娼婦を釣る、どしがたい一面があった。 二人目は重戦士グリーマー。元々は処刑寸前の罪人であったが死と引き換えの恩赦代わりに我々の従事者となった。寡黙な戦斧使いで罪を犯す前は処刑人として幾多の罪人の胴を切り落としていた。寡黙な男であったがそれは冷酷さの一端であり、彼は魔物や悪漢を自慢の戦斧で切り刻むのを楽しむ殺戮狂だった。 三人目は美しき古人リサリー。私たちがガーゴイルの被害に遭う湿地帯のある村を訪れた際、近くの遺跡で見つけた石像がリサリーであった。調べたところ、ガーゴイルの魔法によって石になっていたが魔力が弱まっており、話す事もできた。リサリーの話によると彼女自身もサンテガルと同じく刻印者であり、儀式を執り行っていた最中にガーゴイルの群れよって石に変えられたと言う。 私はリサリーが過ごした年代を知り、驚きと同時にラスバーンが千年近く、早く封印を解こうとしている事が推測できた。リサリーは三千年も前の時代を生きた古人だったのだ。 もしリサリーが何事も無くラスバーンの生贄として捧げられていれば、魔王が今の時代に蘇る事はなく、サンテガルが愛する者たちを失う必要も無かったのかもしれない。
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