少年の記憶〜少年視点〜

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少年の記憶〜少年視点〜

ーーー…ッ郎!…ッ太郎!! 僕を呼ぶ声がするーーー 家の外が騒がしいーーー 僕は静かに目を開ける。 「お前はここに隠れていなさい! 良いか?静かにしてるんだぞ。外にはこわーい鬼達がたくさんいる。 食べられたくなかったらここで大人しくしてるんだ。良いな?」 この人は誰だろう。 僕を小さな物置小屋に押し込んだ「この人」は、僕の肩を強く掴みながら何かを言ってくる。 「言葉」というものはまだよく解らないが、僕を危険から守ろうとしているのは解る。 僕は暗い物置小屋の中から「この人」を見ているが、外は緋く耀く火の灯りがとても明るく、この人の顔が見えない。分からない。 もちろん、今どんなかお(表情)をしているのかも… ただ、解るのは… 「この人」は僕にとって大切な人で、 「この人」は僕の事を大切に想っている。 物置小屋の外はとても騒がしく、何かが焼ける音がパチパチと聞こえ、夜にも関わらず昼のように明るい。 悲鳴、怒号、泣き声、呻き声。 外から聞こえるおぞましいそれらは、まるでこの世の終わりの様な感じがして、大量の蟲が足から這いずってくる様に、不安と恐怖が入り混じったものが皮膚の上に蠢いた。 今何が起きているのかはさっぱりわからない。 でも何かこわいことが起きているということはなんとなくわかる。 だから… だからやめて… こんな真っ暗な小屋の中、独りにしないで… いかないで… そう伝えようにも、僕はまだ「言葉」というものを知らないらしい。 だから泣いた。 僕の気持ちを伝えるために。 それなのに「この人」はただ僕を抱きしめるだけで… 「必ず、戻るから」 顔は見えないが、にっこりと微笑んだことは判った。
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