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「だからノートはリュックに入る量にしろと」
「んー」
俺がハセガワアートを出たあと、航太はやはりapikaDC15を両手いっぱい、ついでにガッシュスクリーモを箱買いしていた。何をどうやったらそんな衝動が湧いて出るのか俺には解らん。
「折角のノート、濡れてない?」
「本降りになる前に連絡ついたし」
「そりゃ良かった。腹減ってない?」
「減ったけど……俺よりトモのが濡れてるから風呂入れ」
「今貯めてるからそのうちにオムライスくらいは作れる」
航太は仕事で散々作って来たのに?って犬歯を覗かせ笑ったけど、卵と冷ご飯とベーコン以外はマルタイ棒ラーメンくらいしかないし。
「てか見て見て、一年半フライパン振り過ぎて腕の太さが左右でこんなんなって」
腕捲りした両腕を差し出すと、航太はその両手首をぐいっと掴み、上目遣いに見上げて来た。これと言った特徴のない薄い顔は……逆に言えば何処にも崩れた部分がない、俺にとっての黄金比的なバランスで形成されている。と気づいたのは最近だが。
「眼鏡汚れとる」
「え、あー、油と雨粒?」
「スクーター危ない。バスにしなさい」
急になんだと思っていたら、航太はしゃがんでガスファンヒーターのスイッチを押した。カチカチカチカチカチ、ボッ、って聞き慣れた音と共に暖気が足元に流れて来て、ガスファンヒーター最強って思いながら航太の旋毛を見下ろす。
「………結局オムライス食うの?食わんの?」
「食う」
「んじゃ炬燵で待ってろ。冷えんように」
「ん」
「時たま風呂見て」
「ん」
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