act.1 ペニーレイン

6/10
前へ
/83ページ
次へ
   しかし………今日はデカ盛りオムライスがもう三回目だ。ココのはレギュラーサイズでも割とデカいのにギャル曽根でも来店してんのか。 「甲斐(かい)さん、左腕の血管(いか)ってますねー」 「フライパン重いー腕ダルいー斉藤くん代わってー」 「嫌ですー。俺は万年サラダとソース担当ですー」 「今日賄いで特訓」 「ぅえ─────」  でも本当に最近、右腕と左腕の太さに違いが現れて来たような気がする。なんと言うか左だけおっさんぽい。俺の理想は航太みたいな繊細な中に光る男臭さ満開の左手なのに、どうにもズレて来た今日この頃。 「いっそ右腕も鍛えてやろうか」 「何ですその “お前も蝋人形にしてやろうか” 感」 「あ゛ー!そんなん言うからカラオケ行きたくなって来たー!」 「ハイハイ、聖飢魔IIでもブルーハーツでも付き合いますからねー。どんどんフライパン振ってくださいねー」  こないだ新成人のお祝いをされたばかりだと言うのに早生まれ18才の後輩くんに(親譲りの)持ち歌をイジられつつも、シフトに入った以上はラストオーダーまで乗り切るしかない。頑張れ俺の左腕。  忙しいながらも和気藹々としたバイト先。想像よりずっと遣り甲斐のある建築科でのお勉強。同性とは言え胸ときめく航太の存在。  俺は多分、大学生活をそれなりに謳歌出来てるんだと思う。  まあ実際楽しいけど。  オトンオカン、ありがとう。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

518人が本棚に入れています
本棚に追加