act.7 ヒア カムズ ザ サン

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   佑にーちゃんの『趣味の域を超越したDIY』が垂水事務所のバックアップに依るものだったと初めて聞いた。俺が以前貰った琉球畳も過剰在庫の横流し品で、工具類も関連の工務店から買い換え等々で使わなくなった道具を譲って貰った物らしい。 「垂水事務所が募集掛けるなんて就活課に一切情報なかった」 「なんか……紹介でしか採る気ないらしくて……最後に入ったのが俺の同級生らしくて……まあ、社長さんの息子だから何てゆーか」 「佑にーちゃんの同級生が垂水事務所の息子なんて情報もなかった」 「いや、チカが市大生なのは知ってたけど建築科生ってのは畳ベッドの時に初めて知って、へ〜〜って……」 「佑にーちゃんは海苔と玉子焼きの事しか頭にない」 「スマン」  謝って貰う必要は微塵もないが、こんな素敵な巡り合わせに胸が高鳴らない訳がない。近江ゼミ生にバレたらフルボッコにされそうだが。  取り敢えずスカイプで航太に報告したら櫻井先生も登場して『僕からも連絡しておくから〜!』と猛プッシュされた。 『トモがF市から出て行かんようにしたいんやわ』 「出て行く気ないけど」 『O組もT工務店も拠点は関西でもフツーに全国展開しとるし。そもそも大手なんか銀行並みに転勤ありきやろ』 「その発想はなかった!」 『真面目に就活する気あるんかオマエ』 「俺はとにかく就職して、いつ如何なる時も航太を食べさせられる男になりたいだけやし」  航太は画面越しでも解るくらい赤くなり、『それなら尚のこと企業データを隅から隅まで調べ尽くして真摯に取り組め』とキレ気味に言い放って通話を切った。折角お昼休みな時間に連絡したのに……いや、お昼休みだからか。  物理的な距離は相当あるが、インターネットのお陰で現代の遠距離恋愛はそれなりに色々乗り越えられると知った。会えない時間に愛がどれくらい育つのか、対比実験し検証する暇は今のところない。  俺の愛は常に成長しまくりだ。
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