退役勇者の憂鬱

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 だが、他の戦線の戦況は、決して良くなかった。  魔王との戦いに多くの財力を投資していたわが国は、他国と戦争をするだけの余力を残していなかったのだ。  より魔王の支配地に近かった他の国々は、頑丈な砦を築き、街自体が強固な要塞であり、防戦に優れていた。  また、かの国らは、魔力の弱まった魔物たちを捕らえ、その不思議な力や毒を研究するために、膨大な投資をして数々の実験を行っていた。  その魔力や猛毒は、魔法兵器、化学兵器、生物兵器と呼ばれる新型の兵器として活用され、多くの人々を効率よく殺傷するために使用された。  そうした新型兵器に、わが軍は、手も足も出なかった。  わが国は敗戦し、多額の賠償金を求められた。  国中がひどい貧困に見舞われ、革命が起きた。  国民同士が血で血を洗い争う惨事となり、私が少年時代から敬愛してきた国王陛下は亡命を余儀なくされ、わが国は「共和国」を名乗ることとなった。  だがいまだ、経済の問題、外交問題は解消されず、政情も不安定のままだ。
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