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苛立ちは頂点に達していた。
そうでなくても遠方への外回りは嫌いだった。
だが、社運を賭けた戦いだったから降りる事はできない。
負ける訳にはいかなかった。
しかもこのご時世だ。
あの、人を見下した男。
醜くぶくぶく肥大した体を揺らし嗤う。
足元を見られ、奴の術中に完全に嵌ってしまった。
部下達の面前で己の力を誇示したい意図すら見え見えだったのに。
交渉は圧倒的不利なもので終わった。
その時のあいつのしたり顔は、思い出すだけで反吐が出る。
夕方になっても冷めやらぬ灼熱地獄の中、不本意ながら締めていたネクタイを振りほどく。
時代錯誤も甚だしい。
クソッ。
会社への報告など明日でいい。
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