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おまけ まゆちゃんのかねた
私のカレシのかねた。ふつうの男の子。
兼貴って名前なんだけど、昔からみんなに「かねた」って呼ばれてるみたい。
私は、かねたが面白い。
かねたは飲み会の時に、自分の食べた所をキレイにする。
「本当は全部皿重ねたいんだよなあ。これ飲食バイトあるあるかな」
かねたはゴミをポイ捨てしない。それどころか時々ゴミを拾う。
「変?高校の時にそういう部活だったんだ。え?ごみ拾い部じゃないよ。野球部。今は気が向かなかったらスルーしちゃうけど」
かねたは洋服に興味がない。
「ずっとジャージだったから、何着ていいのかわからないんだよね」
たまにどこかの球団の応援ユニフォームを着てきて、今日は観戦なのかとか、いや試合ないだろとかツッコまれてる。
かねたは、少し前に自転車に轢かれて大変だった。
会った時には、「まゆちゃん、三途の川あったよ」って言って笑ってたけど。
「どっちに渡ったらいいのか全然わからなかったんだよなぁ」
「どうやって決めたの?」
「んーどうだったかな。あ、でもさ……」
まゆちゃんにキスしたかったなって思ったんだ、と言って顔を近付けてきたから、鼻がくっつきそうなあたりで訊いてみる。
「心残りがなくなっちゃうんじゃない?」
「ずっとまゆちゃんにキスできないままはやだよ。やりたいことも行きたい所もいっぱいあるし。あと、言ってなかったから……」
本当は、オレもずっとずーっと、まゆちゃんのことが気になってたんだ。唇に触れてからそう囁くかねたはずるいと思う。
だけど、照れくさそうに言うのが可愛くて、私は背伸びをして、もう一度かねたに近づいた。
私は、ちょっとずるくてまぬけで真面目なかねたが大好きなのだ。
おまけ おわり
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