薔薇色の日々

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薔薇色の日々

 僕は、(あこが)れの彼女に、告白をした。  十中八九(じゅっちゅうはっく)、フラれると思っていたら、何とッ!   返事は、OKッ!  もう、ほんっっっとに、ビックリしたッ! ビックリ、クリクリ、クリックリッ! って、こういうことを言うんだと、僕の目の前の未来が、パァーーーッッッ!!! と開けたッ!  あの瞬間の、あの感動は、きっと、この先、一生忘れないのだろう。  僕にとって、それからの日々は、まさに、薔薇色(ばらいろ)の日々となった。  彼女と付き合い始めてから、初めての彼女の誕生日。僕は、その気持ちを伝えるべく、薔薇の花束を彼女に贈った。  彼女は大変喜んでくれて、実は、彼女も薔薇が大好きなんだと、そのとき教えてくれたのだった。  やがて、僕たちは結婚。  お互いの、いいところも悪いところも許せてしまう日々。それは、まさに、  La vie en rose(ラ・ヴィ・アン・ローズ)。 『薔薇色(ばらいろ)の人生』と訳される、おフランスの言葉があるけれど、まさに、こういうことを言うんだと、僕は、幸せを噛み締めた。  お互い薔薇が大好きということもあって、何かを買うときは、好んで、薔薇の柄のデザインのものを選んでいた。  結婚後、彼女から初めてもらった誕生日プレゼントは、白地に薔薇の柄がいっぱいデザインされたパンツとTシャツと靴下だった。  それも31枚ずつ!  プロ野球の先発投手のように、中四日(なかよっか)とか中五日(なかいつか)の『先発ローテーション』を計算しなくても、一ヶ月に一回の『洗濯ローテーション』も組めた。  白地に薔薇の柄がいっぱいデザインされたYシャツ・ネクタイ・スーツ・靴も、記念日ごとに、ワンセットで彼女から贈られ、何着にもなったので、仕事でもプライベートでも、毎日ローテーション出来た。  僕は、毎日毎日、インナーもアウターも、白地に薔薇の柄のものばかり着用し、日常使う、ありとあらゆる全ての物品も、白地に薔薇の柄のものを使用した。  La vie en rose(ラ・ヴィ・アン・ローズ)。  僕は、彼女とリアル『薔薇色(ばらいろ)の人生』を歩んでいた。  いつしか、僕は、世間の人たちから、『高島屋』、と呼ばれるようになっていた。 「よっ! 高島屋っ!」 「高島屋ッ! あぁ高島屋ッ! 高島屋ッ!」  毎日、街のあちこちで、いろんな人たちが、大きな声で、僕に、合いの手を入れて下さる、そんな薔薇色の日々。
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