冬、君との距離

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 3学期、一年生最後の学期。  うちの学校は二年生でクラス替えがある、だからなのかはわからないけれど、一年生のお別れ会的な行事があるのだ。  各クラス何か催し物を出さないといけないということなんだけど、さっきから私は大ピンチを迎えている。 「え、いや、無理ですって、もう5ヶ月も触ってないし」  私が必死の抵抗を見せるのに。  黒板には【ドラム 片山海音】と書かれている。  そしてその横には【ギター&ボーカル 加瀬拓海】【ベース 百瀬亮】  ちなみに百瀬くんは同じクラスで軽音部の仲間だった人。  彼は違うバンドのベースをしてる子。 「だってドラムできるの、このクラスに片山さんしかいないでしょ」  責めるような委員長の言葉に周りも、ウンウン頷いてこっちを見てるし。  その視線に居たたまれなくなって最終的には。 「……、やります、やるけど……もう腕が鈍ってるので期待だけはしないで下さい」  消え入りそうな私の返事に周りは拍手喝采。 「では1年B組の催しはB組BANDとします」  パチパチパチ、じゃないよ、もう。 「ねえ、Na na naやってよ~!!」 「え~?! smileも聴きたい」  事情を知らない女子たちの勝手なリクエストに一瞬河本さんと目が合って焦る。  その二曲を加瀬くんが作った理由は河本さんだってきっと知らないはずだけど、何だか気まずい。 「曲は三人で決めさせて」  加瀬くんの言葉に皆納得しつつも、それでもあちこちでNa na naがいい、smileがいい、と小さな声が聴こえてる。  私と加瀬くん=TAM'sのイメージはまだあるのだろう。 「片山さん、よろしく~! 早速帰りにでも打ち合わせしようよ」  百瀬くんに連れられた加瀬くんも一緒にいて、思わず頷くと。 「本当にいいの? 大丈夫?」  心配そうな加瀬くんに、わからないと首を傾げる。 「多分ね、前みたいには叩けないよ! 大分鈍ってるもん。それでもいい?」  不安げな私に。 「できるだけ簡単なのにしよっか」  大丈夫、と気遣ってくれる加瀬くんに安心した。  その日の帰りに3人で教室に残ってどうするか話し合い、何曲にするか、誰の曲にするか。 「TAM'sの楽曲でも別にいいよ、オレは。が、ギター一本足りないしそうなると加瀬が編曲大変?」 「ん~、ま、大変っちゃ大変だけど、それよりも」  向けられた視線は私へ。 「そっか、そうだよなあ、片山さんブランクあるもんな、ぶっちゃけどんだけ叩けるか次第ってとこ?」  頷く加瀬くんと、そうか、と納得してる百瀬くんに申し訳なくなる。 「まあ、当分練習するしかねえな、とはいえ片山さん軽音部辞めたから部室使えないし、あ、アオイん家の防音部屋借りれないかな?」  思わずそれには、すぐに私が首を横に振った。 「ス、スタジオ行ってみたいな、私! 行ったことないし」  と話の矛先を変えた。
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