冬、君との距離

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 やっぱりアオイくんって教え方上手だな。  今までつっかかってたところも自分が何でつっかかっているのかまで解説してくれるから。  人に教えられるってことは自分ではきちんと理解してないとできないこと。  改めて、アオイくんの頭の良さを毎度思い知らされる。  さすがです! と拍手を送ると照れくさそうに微笑んでる。  アオイくんのその笑顔は人を元気にさせたりホッとさせる作用があるのかな。  最近私はアオイくんに元気を貰ってばかりな気がする。 「海音ちゃんは飲み込み早いからやればできる子なのにな」 「だって数学大嫌いなんだもん」  アオイくんのお母さん特製ハーブティーを頂きながらマフィンを食べつつ休憩。 「アオイくん、ギター弾ける? 今も」  チラリと壁際の楽器類に目を向けたら。 「弾けるよ」そう言ってギターを手にした。 「リクエスト、ある?」 「アオイくんにお任せします」 「じゃあ、海音ちゃんの知っている曲を」  ベッドに腰かけたアオイくんが弾き出したのはsmile。  加瀬くんの低音とファルファットで歌う色っぽい独特の歌い方とは違う、アオイくんの優しい歌声。  その澄んだ歌声が優しすぎて明るい曲なのに切なく聞こえてしまう。  アオイくんはsmileが創られたきっかけを知っているんだろうか。  聴き入ってしまったけれど弾き語りは一番だけ。  二番の歌詞を聴いてたらきっと私は泣き出してしまってたと思う。  ジャンッと音を止めたアオイくんに拍手した。 「ま、これでわかったでしょ、ギターは周にはかなわないし、歌は拓海にはかないません」  苦笑してギターを片づけてこっちへと戻ってくる。 「そんなことないよ、アオイくんの声優しいし上手だし、ギターだって弾いてないとあんな風には弾けないもん、すごく良かったよ! 聴き惚れちゃった」 「……、海音ちゃん」 「ん?」 「前も皆のこと褒めすぎて拓海に止められてたでしょ? あれ拓海が止めなかったらオレが止めてた、本当褒めすぎ、ズルイ」  恥ずかしいから、と真っ赤になってるアオイくん見て何だか私も気恥ずかしくなる。 「smileってさ、海音ちゃんの曲だよね」  知ってたの?! 驚いてアオイくんの顔を見たら。 「歌詞聴いてたらわかるよ、多分周だってわかってた」  あの、周まで? 「わかりやすいもんね、加瀬くんは」  あの曲を始めて聞いた時のこと思い出して、泣きそうになっちゃって笑って誤魔化したら。 「うん、わかりやすい、アイツは」  アオイくんの方が一瞬私より泣きそうな顔をしたように見えた。
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