冬、君との距離

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「ヤバイわ、海音ちゃん」  待ち合わせ場所で私を見つけた瞬間、アオイくんは目を丸くして驚いている。 「なに? 何があったの?!」  ヤバイを探しにキョロキョロすると。 「海音ちゃんが可愛すぎてヤバイ」  言うなりアオイくんは私を一瞬ギュッと抱きしめて笑う。  ……、この人もう隠すつもりないみたいだ。  顔から火が出そうなほどに真っ赤になってる私の手を握り歩き出す。  ちょっと、だけのつもりだった。  クリスマスだし、ちょっとだけオシャレしようかな、と夕べ自室で鏡見ながら服を合わせていると。  ノックもせずに入ってきたお姉ちゃんが私がデートするらしいと勘づいて自分の勝負服を色々と引っ張り出してきて。  ファー付きの白いコートやら上が黒で下が赤いチェックスカートみたいになっているワンピースとか。  もうこれじゃ本気のデート服じゃないか、と抵抗するのに。  今朝は髪の毛巻かれたり、メイクまで。  何だかめちゃくちゃ恥ずかしいけれど、アオイくんが喜んでくれてるし、良かったのかも。  海辺の赤レンガ倉庫街は恋人たちでいっぱい。  私たちもそう見えてるかな、多分。  ジングルベルのオルゴールミュージックが流れシャンシャンと鈴の音が聞こえてくる。  たくさんの飾り物をつけたクリスマスツリーの大きなもみの木は外国から毎年運ばれてくる私たちの街のシンボル。  その景色の中の一点に私の目は釘付けになる。 「アオイくん、ねえねえ! あれ! サンタさんがいる!」  指をさす私たちの前方にはサンタクロース。  真っ白な髭に丸眼鏡のサンタさんは子供たちに囲まれて写真を撮っている。  いいなあ、サンタさん。  きっと私思い切り羨ましそうな顔してたんだろうな。 「海音ちゃん、並ぼ」  おいで、とアオイくんに手を引かれて写真を撮ってもらう列へ、子供たちに混じって並んで。  サンタさんを真ん中に写真を撮ってもらった。 「私サンタさんと写真撮ったの初めて!」 「オレも」  お互いにその写真を待ち受けにしてから倉庫街のショップに入った。  帽子のお店に入るとアオイくんは色んな帽子を被ってる。  どれも似合う、様になるなあ。 「あ、これがいい、これにしよ、アオイくん!」  ハットのもいいけど今日のアオイくんのコーデにはニット帽が似合うなあって。 「これにしよ、って」 「アオイくんへのクリスマスプレゼントにしたいんだけどダメかな?」 「う、うそ?!」 「他のが良い?」 「海音ちゃんから貰えるなら何でもいい、あ、何でもはあれだけど」  嬉しそうに目を細めるアオイくんの手から帽子を受け取ってから。  レジで会計していると。 「仲良しですね」  クスクスと店員さんが笑ってるのはアオイくんが私の肩に頭を乗っけてニコニコ待ってるんだもん。
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