冬、君との距離

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「海音ちゃん、ねえ来て来て!!」  アオイくんに手を引かれて次に来たのはアクセサリーショップ。 「んん! ダメダメ、高いもん、買ってくれようとしてるでしょ」 「高くないの選ぶから大丈夫!」  そう言って私を鏡の前に立たせてネックレスを色々とあててくれる。 「あ、可愛い」  気に入ったのはコロンとした小さなハートがついたネックレス。 「なら、これにしよっか」  あ、ちょっと待って、値段確認してない、と思った時にはもうアオイくんはレジへと走っていて。  待っている間、その色違いのネックレスを見た時に私のプレゼントした帽子の二倍の金額であることに青ざめた。 「はい、海音ちゃん」  小さなプレゼントボックスを手に戻ってきたアオイくんに。 「ごめんね、高かったよね、本当にごめんなさい」  申し訳なさでいっぱいになるのに。 「大丈夫、ちゃんと小遣いプラス貯金持ってきたし! 海音ちゃんとのデート軍資金」  笑って箱を開け中身のネックレス取り出して。  「つけさせて」ハイと私を後ろ向かせて器用にネックレスをつけてくれてから。  「ん、可愛い、海音ちゃんに似合ってる」   ね、って笑ってさらりとバックハグ。  鏡越しにアオイくんに抱きしめられてる私の姿に真っ赤になってるのに。  私がドキドキしてるの何かアオイくんはお構いなしなのかもしれない。  オレも被っていい? と私がさっきプレゼントした帽子を被ってくれて、倉庫街を二人で廻る。  手はずっと繋がれたまま、しかもいつの間にか恋人繋ぎのように指まで絡められて。  心臓が持たないかもしれない。  ランチはアオイくんが美味しそう~って眺めてたビュッフェレストラン。  二人掛けの小さなテーブルいっぱいにお皿並べて窓から見える海を眺めながらジュースで乾杯。  クリスマスビュッフェなだけあって、それっぽい料理やケーキがたくさん。  どれにしようか、と皿に並ぶ料理を眺めていたら、ふと見られているなと視線に気づく。  顔をあげたら、アオイくんが含みを持った顔で笑いを堪えてる。 「何?」  何か私変なことしたかな? 「海音ちゃん楽しそうだなって、どれにしようかなって顔で笑いながら料理見てるし」  う、図星だ。  恥ずかしくなって唇噛みしめると。 「ああ、もう全部可愛いや、オレのも食べちゃっていいよ、海音ちゃん」  クスクス笑ってるけど、しっかり聞こえてるから耳まで火照ってるよ、私。 「そんなに食べられないからアオイくんも食べて」  照れ隠しに手前のお肉をブスっとフォークに射してアオイくんの口元に運ぶと。  アオイくんは目を丸くしてて。 「いいの? オレが食べちゃっても? その後、海音ちゃんが間接、」 「!! ダメ、嘘、私が食べるっ!!」  慌てて自分の口元に運んでお肉を頬張る私に耐えきれないとでも言うようにまたアオイくんは涙目で笑い堪えてる。  アオイくんといると時間はあっという間。  楽しくて、でも今日最後にある大きなイベントを考えると時々気持ちが沈んでしまうのを悟られないように私もアオイくんに応えるようにずっと笑ってた。
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