冬、君との距離

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 金曜日の練習終り、百瀬くんからの親睦会提案で3人でご飯を食べて帰ることになった。  スタジオのすぐ隣にあるファミレス。  それぞれ好きなメニューとドリンクバーを頼んだ。  私はオムライスとサラダのセット。 「片山さん、そんなんで足りる? オレ腹減っちゃって」  百瀬くんは痩せた体に似合わず、カレーとハンバーグ定食。 「百瀬が食いすぎなんだよ」  苦笑する加瀬くんはドリアとサラダセット。 「取り合えず、Na na naはどうにか様になってきたけどsmileどうするよ」 「ん~、どうしよっか」  どうしよっか、の加瀬くんの視線の先はもちろん私だ。 「十日は欲しいかも」  引き攣り笑いの私に。 「そんぐらいならいいや、もう一曲練習できる時間取れるし」 「ええ!もう一曲?!」 「二曲じゃダメでしょ、せめてもう一曲やろうぜ」  な、と張り切る百瀬くんに心の中では今でももうかなり無理してるんだってば!! 何勝手なこと言ってんの?! って気分だけど。  ははははは、と乾いた誤魔化し笑いを返しておいた。 「そういやさ」  唐突に私の目を見て何事だろうと思った瞬間。 「片山さんってアオイと付き合ってる?」  カチャン。  百瀬くんが放った衝撃発言に思わずスプーンを落としてしまって。  拾い上げて何食わぬ顔で新しいスプーンを取ってから。 「ううん」  無表情で首を横に振った。  何故か加瀬くんの顔を見ることできずにひたすらオムライスをかき込む。 「え? そうなの? 前も赤レンガで見かけたんだよな、二人でいるの。最初の練習日の後も会ってたでしょ、てっきりそうなのかと」  クリスマスとハンバーガー屋だ!  何て間の悪い人なんだろう。  百瀬くんいたのね、あそこに! 見られてたのか! 「相談に乗ってもらってた、の、ドラムの」  もうお願い黙って百瀬くん!  黙らせるために私のオムライスもその口に押し込んであげたい。  加瀬くんだって何だか変な空気感じてるのか黙ってんじゃん!! 「良かった、オレだけ彼女なしかと思ったわ! 加瀬はいいよなあ、あんな可愛い子が彼女で」  矛先が急に加瀬くんへと向かった。  この人完璧空気読めてない、何か他の話題提供しなきゃ、と思った瞬間。 「オレもいないよ、彼女」 「は? またまたあ、いつも一緒にいるじゃん、河本さんと!」 「菜々は幼馴染、それだけだからあんま変な噂流すなよ、百瀬」  ……あれ?  そっと加瀬くんを見ると、加瀬くんも私を見ていて。  お互い目が合った瞬間、パッと逸らした。  待って、加瀬くん、どういうこと?! 「おっ、ちょ、待って、電話」  私たちの微妙な空気を微塵も感じることができない百瀬くんは急に席を立って店の外へ。  誰かと楽しそうに話しながら行ってしまう、顔の緩み具合から女の子に違いない。
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