冬、君との距離

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 二月十四日日曜日、バスから降りた私にアオイくんのお迎えの笑顔に、ホッとした。 「いつも、ありがと」  私も笑顔を返したけれど。 「ん? 何か今日変」  並びながら私の顔を覗き込むアオイくんのその言葉にドキッとする。 「目、腫れてる?」 「そうなのっ、むくんじゃってるの、あんまり見ないで」  恥ずかしいからと目を反らしたけど。  ああ、些細な違いにまでアオイくんには見抜かれちゃう。 「ま、いっか、むくんでても海音ちゃんは可愛いし」 「可愛くないよ」  ふくれてみせた私にアオイくんは今日も優しい。  だから私はあの日のことは何も言わないことにした。  言ったら何だかアオイくんを悲しませるような気がして……。 「今日、日曜日だからアオイくんのお父さん、お母さんいるかな? 二人にもケーキ焼いてきたんだ」  話を変えた話題に。 「昨日から温泉旅行行ってる、オレ一人留守番」 「え?」 「あ、夕方には帰ってくるんじゃないかな、って……、海音ちゃん警戒してたり」  ブンブンブンと勢いよく頷いて、アオイくんから一歩離れたら。 「あはは許可なく襲わないってば」 「本当に?」 「わー、何その疑いの目、むっちゃ悲しいやん」  関西弁でお道化て見せるのでつい噴き出すと。 「ちょっとだけギュッてしちゃうかもだけどね」  へへっと笑うアオイくんに必死に首を横に振る。    いつもは賑やかなアオイくん家、本当に誰もいなくて。  アオイくんの部屋に上がると、やっと音楽が流れていてホッとした。 「言ってくれたらお昼ご飯持ってきたのに」  お昼は冷凍ピザで済ませたというアオイくんに水臭いなあと伝えると。 「だよねえ、昨日から海音ちゃんに泊まりに来てもらって同棲ごっこしたかったなあ」  何も聞こえないふりでカバンからアオイくんに渡すチョコレートの箱を取り出した。 「いつもお世話になってます、感謝を込めて」  どうぞ、と差し伸べると。 「何か義理チョコみたい」  むううっと唇尖らしてもらってくれない。
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