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本当は今日、義理ではないと伝えようと思ってた。
でもそれを言う勇気もなくて黙ってしまうと、アオイくんはクスクス笑いだした。
「んな困った顔されると本気で否定されてるみたいで悲しくなるからヤメテね」
いただきます、と私から箱を受け取って早速開けてる横顔。
言わなきゃ、ちゃんと伝える。
「アオイくん、あのね、義理じゃないの、」
勇気を振り絞ってそう伝えた。
ちゃんと伝わってるかな?
アオイくんは驚いたように私を見ていて。
「海音ちゃん今自分で何言ってるかわかってる?」
そう首を傾げたアオイくんに。
「わかってる、つもり」
小さな声で返事をしたら。
「思い切りいいように勘違いしちゃうけど、いい?」
微笑んだアオイくんが私の頬に触れる。
戸惑って俯こうとするのを妨害するようにコツンと額と額と合わせて覗き込まれて。
ダメならまだ間に合うよ、そんな間をくれているのに。
アオイくんの優しい目に見つめられたら胸の奥がキュンと音を立てて近づく唇の熱にそっと目を閉じた。
その瞬間。
ピンポーンというインターホンが階下から鳴り響く。
一瞬ギクリとして離れて様子を伺ってたアオイくんだったけど。
もう鳴らないな? とキョロキョロしてからもう一度私の方へと手を伸ばした瞬間に。
ピンポーン、ピンポン、ピンポン、ピンポンの連続に。
「誰だよ、ったく!!!!」
ちょっと待っててね、と少しだけ私を抱きしめてから階段を降りていく。
その瞬間、私も張りつめていたものが全部解けた気がして大きなため息をついた。
……、キス、しそうだった。
うわあああああ、何してるの? 自分。
思ったよ、思ったのよ、アオイくんにならって確かに。
今日はダメだってご両親いないし、何かそのもっと変な雰囲気になっちゃったら困る、うん。
でも……、さっきのアオイくん、すごく色っぽかったな。
キャー、なんて真っ赤になりながら一人悶絶してるところに。
トットットットと軽やかに階段を上がってくる足音が聞こえてきた。
その後でもう一つ、いや二つ足音?
「ダメだって、帰れってば」
アオイくんの怒ってるような声と。
「やだ、アオイの彼女見たいもん」
女の子の声?
「辞めとけって、帰ろう」
もう一人の男の子の声に、聞き覚えがある。
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