冬、君との距離

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「……、片山さんだ!!!」  ガチャっと開いたドアからヒョコッと顔を出したのが河本さんで私の顔を見るなりそう声をあげた。  その後ろから険しい顔をしたアオイくんと。 「何かゴメン」と、加瀬くん……。 「ハイ、もういいでしょ、帰ってね、菜々」 「やだ、もうちょっといたい、いい? 片山、えっと海音ちゃん?」  学校とは違う雰囲気の河本さんの笑顔にタジタジになって作り笑顔で頷くと。  ニッコリ笑って部屋に入ってきた河本さんは私の隣に座って。  テーブルの上のカップを見て。 「アオイ、私も何か飲みたい」 「飲んだら帰ってね」  ため息をつきながらアオイくんは飲み物を取りに渋々階段を降りていく。  加瀬くんはベッドに腰かけて困ったようにうなだれてるし。  河本さん、この状況はカオスだよ、割と。  だけど全然そんなの気にする様子は彼女にはなくて。 「海音ちゃんもアオイにチョコレート持ってきたの? 私もなんだよ」  ホラっと言う河本さんの手には確かに小さなプレゼントボックス。 「拓海の家に先に寄ってから一緒にアオイの家に来たの、そしたら何かアオイが変なの」  ん? 変? 「いつもなら、勝手に上がっても何も言わないのにね、今日だけとっとと帰そうとするの、何か変だなって。そしたら玄関に女の子のブーツがあるんだもん、そりゃ顔見たくなっちゃったよね」  アハハって笑う河本さんに拓海くんもため息ついてる。  学校ではあまり人と話さないしこんなに笑ってるのも見たことなかった。  こんなに明るく笑う人なんだ、と今初めて知った。  そんな私の戸惑いに気づいたように。 「ごめんね、ビックリするよね、私学校では猫かぶってる、あれ? 猫かぶってるでいいよね、拓海」  あ、そっか、日本語が……。 「だね、上手にかぶってる」  加瀬くんの嫌味のようなそれにもエヘって笑ってて。  勝手に河本さんのことは自分と同じような大人しいタイプで、だから加瀬くんは私と彼女を重ねて、とか……勝手に思ってたから。  こんなに明るい人だとは思ってもなかった。
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