春の自分

4/7
前へ
/35ページ
次へ
意外と学校の授業は終わってしまえばあっという間な気がする。 最近はテストが近いこともあり復習を兼ねた内容でもあるためか、余計に早く時間が流れている。ちなみにテスト週間が終わるまでは部活は休みということとなっており、しばらくは寄託部の様な生活をする予定だ。 下駄箱に向かい靴を取り出し、足を入れようとした時だった。 「わっ!」 右足に急激な脱力感を感じ2.3歩よろけるようにして尻餅をついてしまった。 「何やってんだべ」 近くにいたクラスメイトが呆れたようにこちらを見てくる。 「や、なんか力入んなくて」 「あー?体幹弱ってんの?」 「野球部なめんな、バッチリだし」 「んじゃ平気だな。またあしたー」 素っ気ない奴だ。すたこらと帰宅してしまった。 俺ももしかしたら疲労が溜まっているかもしれない。早く帰宅してしまおう。 体勢を整えて立ち上がると若干ふらつきはしたものの、あの脱力感は消えていた。自転車をこぐ分にも問題ないだろう。 時刻は午後の4時手前。 定刻が変わったためもうすぐであの踏切に電車が通る時間だ。今度は電車がきて踏切のポール遅れないために俺は急いで愛車に跨り試合の場へと急いだ。 今日は珍しく自転車で登校できたのは、これまた珍しく父が今日の通勤は電車を使うためだ。 今日だけの特権ではあるが快適なことには変わりない。 自転車ならばあの忌々しいポールよりも早く踏切の向こう側に行けるはずだ。 別に電車が通った後に踏切を渡ればいいのだが、どうしてかポールが下がって来る時に渡りきってしまいたい願望があった。 所詮、自分ルールというやつだ。 ーーギリギリで渡れたら今回のテストは余裕で通過出来る。 テストへの願掛けをしつつ踏切の手前の坂まで登りきる。 この坂のてっぺんから下に続く道の先に踏切がある。 下の坂が見える頃、2つの赤い電灯がチカチカと点滅し、踏切特有の高らかな警告音が響いていた。 「ちょうどじゃん!」 坂を勢いで下る。 さすが人間の足より2輪の車はスピードが違う。ぎりぎりポールが降りる前にくぐれそうだ。 チカチカと点滅する赤。 その隣には先日見かけた女の子がいた。相変わらず俺にそっくりな顔でぞっとするが、それだけだ。特に気にする事はない。 ーーまだあの子こんなとこにいたのか。 ちらりと横目で確認しつつも、俺にとってはどうでもいい事なので無視をする。 線路の中に入り、そのままスピードに乗って駆け抜けようとした時だった。 ガシャンッッ! 「あっ!?」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加