その男、深水優響

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 昇降口の前には人集りが出来ていた。  その中にさっき見掛けた男子生徒もいた。  長身のせいか、人混みの中にいても一際目立つ。  アタシは何故か彼から目が離せないでいた。  彼はクラスを確認すると、フッと笑みを浮かべていた。  そしてやはりワルそうな男子生徒数人と談笑をしながら、昇降口には入らず中庭の方に歩いて行った。 「あ、花恋ちゃん、一緒!良かった~!また同じクラスだよ」 「え?どこ?何組?」 「ほら、そこ、4組の所。【有藤 花恋】(うとう かれん)、そしてここ、【豆野 友香】見えた?」 「あ、うん…」  アタシは、それ以上会話を広げなかった。  4組か、何か微妙な気がする。  陳列された紙に書かれた名前を見た所で、アタシは何も感じなかった。  誰が何組になろうが、誰と同じクラスになろうが関係なかった。  アタシは、基本ひとりだから。  友達なんかいないし、欲しいとも思わない。  結局、その場凌ぎの上辺だけのお友達ごっこ。  そして、都合が悪くなったり男が絡むと、大抵揉めて離れて消えていく。  面倒臭い。  だったら、最初からそんなの要らない。  友香はこんなアタシの隣にいるのに、終始楽しそうに話をしていた。  自分で言うのもなんだけど、アタシと一緒にいて楽しいのだろうか?  友香の話をただ聞き流しているだけで、気を使って相槌を打つわけでも話をするわけでもない。  友香だって、どうせすぐに離れて行くに決まってる。  新しいクラスになれば私の噂が全てリセットされるとか、都合の良い展開なんか期待してない。  きっと、明日になれば誰も話しかけても来なくなるだろう。  アタシは誰にも期待しない。  大人も先生も信じない。  友達なんか要らない。  私はひとりで平気だから。
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