もう九腸寸断でしかない

2/9
前へ
/112ページ
次へ
 あれは、いつだったっけ?  そんなに前ではなかったような気もするけど、記憶が曖昧で思い出せない。  違う、本当は思い出したくないから、曖昧なままにしてるんだ。  だって…  それは、本当に突然だったから…  ある日を境に、アイツはアタシに急によそよそしくなった。  でも、アイツはアタシを拒否するわけではなかった。  ただ、アイツからはアタシに何も話さなくなったし、近付いても来なくなったのだ。  そのうちアイツが2年生の女の子と毎日一緒に帰っている事が発覚し、アタシもアイツと距離を置くようになった。  推薦入試や就職試験が始まり、クラスの中も慌ただしくなり、アタシとアイツがどうとか噂にもならなかった。  そんな日がしばらく続き、それが当たり前の日常になって来た頃。 「花恋ちゃん、大変!」  4時間目の授業が始まる直前、由芽が大慌てで教室に駆け込んできた。 「どうした!めっちゃ、慌ててんじゃん?」  由芽は肩を震わせながら、荒い呼吸のまま話し出した。 「サキちゃん、東京の私立大に進学が来まったって…」 「そうなんだぁ」  そっか、大学決まったんだ。  良かった~!  由芽に素っ気なく返事をしたものの、アイツの進学が決まった事を知り、内心は自分の事のようにホッとしていた。 「花恋ちゃん、どうするの?」  由芽がまだ荒い呼吸のまま、アタシに訊ねた。 「アタシ?地元の短大に進学決まってるけど?」 「違う!そうじゃなくて、サキちゃん東京行っちゃうんだよ?このままでいいの?」  いいのって、仕方ないじゃん。  アイツが希望した大学に受かったんだから、アイツにとっては良いことだし…  それに今は、前みたいに話せる状況でもない…
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加