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「放っとけねぇんだよ。お前にどんなに避けられても嫌われても、俺はお前じゃなきゃダメなんだよ」
優響の言葉が、乾いていたアタシの心に熱風を吹かせた。
優響の一言一句が、アタシの胸を熱くした。
胸の鼓動が速くなる。
「お前は?お前はどうなんだよ?」
優響らしくない少し気弱な言葉。
アタシを抱きしめているはずの腕が、アタシにしがみ付いているように感じてしまう。
無意識にアタシは優響の背に手を回していた。
「アタシだって、優響じゃなきゃ嫌だよ。でも優響はアタシから逃げたじゃん?それに彼女だっているじゃん?だから、忘れようって決めたのに…やっと決断したのに…何でこんなことするの?」
自分で言っておいて、恥ずかしくなってしまった。
優響は抱きしめていた腕を緩め、アタシの顔を覗いた。
出来れば、今は見て欲しくない。
いや、いつでも近くでは見て欲しくない。
「俺はお前から逃げたつもりはない。彼女もいない。だけど、お前になかなか言い出せないことがあった。それがお前を不安にさせてた。だから俺から距離を置くようになったんだよな?」
「何が言いたいか分かんないよ」
優響に見つめられてるから、ただでさえ話が上の空なのに…
回りくどい言い方しないで、ハッキリ言ってくれなきゃ頭に入らないよ…
「俺、ケリつけてくるわ。だから、信じて待ってろ」
優響はそう言って、アタシの髪をグチャッと撫でた。
ホント、意味が分からない。
でも、アイツが嘘を言ってないことだけは分かる。
目の前の真っ暗闇から、一筋の光が差し込むような状態だろうか?
この時のアタシは、アイツがどれだけアタシを思ってくれていたかなんて分かりもしなかった。
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