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急転直下
あれから数日。
いろんな事が分かった。
優響がアタシを避けていた理由。
正確には、優響がアタシによそよそしくなって、アタシが距離を置くようになったんだけど、アタシは優響がアタシを避けてるんだと思ってた。
小さな勘違いや誤解はあったけど、その根底にあったのはアイツの優しさ。
今だから【分かりにくい】って言えるけど、言ってくれなきゃ分からない優しさなんだよね。
分かりにくい優しさを重ねてくれるより、直球で伝えてくれた方が良かった。
直球激昂突っ走り型のアタシの性格を熟知してのことだと思うけど、それはそれで辛かった…
今回の件を振り返って、由芽がアタシに言った言葉。
「花恋ちゃんにとってみれば、サキちゃんがきっと初めての恋愛なんだろうね。恋とは違う、初めての恋愛だよね?」
「初めての恋愛?」
そもそも恋愛とは何だろう?
辞書で恋の定義と、恋愛の定義を引いてみたことがある。
辞書での定義と、自分で感じる恋と恋愛との定義は、また違うような気がする。
「そうだよね。恋って恋に恋してしまうと言うか、好きって感情が自分の中で活性化していく思いというか、片思いに近い感情よね。でも恋愛って相手あってのことだから、思いを伝え合ってるのに、伝わらないとか届かないとか。楽しさも嬉しさも倍になるけど、辛さとか悲しみも倍になるのよね…」
友香まで、しみじみと語り出した。
「今思えば、前嶋と付き合っていた時は恋でも恋愛でもなかった気がする。でも優響とは付き合ってないけど、すごい恋愛をしてた気がする」
「花恋ちゃん、何で過去形?」
由芽が笑いながらアタシに聞いた。
「アイツとは最悪な始まりで、でも気付いたらいつも近くにいて、いるのが当たり前だったのにいなくなっちゃって、アイツがいないことがアタシの中で結構大きなダメージで、でも違ったって分かったから、今は前を向いていけるような気がしてる」
アタシは今感じてる正直な気持ちを、2人に伝えた。
「てか、何なの?その完結的表現は?」
あきれたような由芽の顔。
またこんな風に笑える日が来るとは思わなかった。
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