第2章〜動き出す運命という名の試練…⑦

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第2章〜動き出す運命という名の試練…⑦

✴︎23話〜白と黒〜傾きし天秤とズレる歯車〜       ※※※※※※※※※※※  ここは遥か天空の彼方にある天空の城。  この神の住む天空の城は、サラディアーナとは別の次元に存在し、位置的にはスカイネーブルの真上の辺りに存在する。  城は虹色に輝きを放ち、建物と建物の間には道はなく、移動手段は光を放つ円盤の上に乗り、行きたい建物の場所にある円盤に転移する仕組みだ。  神王ジェネシウスは常に人間や魔族、そしてこの世界の動物や植物などあらゆる物を監視し見守っている。  神は元々人間の姿に似ているが、人間とは違い眩く光るオーラを常に身体全体に纏い光を放っている。  そして、普通の人間には神の姿は見えない。  神王ジェネシウスは、常に目を閉じ心の雑念を払っている。何故その様な事をするのか、それは心の目でサラディアーナの行末を先々まで見据える為と世界の本質を見る為だ。  だが、ここ数千年前から神々に異変が起き始め、絶対的な力を有する神王ジェネシウスの力でも、どうする事も出来なくなっていた。  神王の望みは、あらゆる生き物達が仲良く平和に生きる事だ。  だが、人間側に付く神と、魔族側に付く神と、その両方どちらも平等に接する神々が現れ出した。  神王ジェネシウスは、神々の心が自分と同じ心へと導きたかった。だが、他の神々の本質や考え方が違っていた為、それを正す事は叶わなかった。  それに神は元々、死ぬ事はない。消滅したとしても、同じ姿や考え方と前の記憶を持ち、また生まれ変わる。  神王は、過去に過ちを犯した神に罰を与えた事がある。  だが、その神は一時的に悔い改めるが、また再び同じ事を……いや、繰り返すどころか、その神は自分を戒めた神と英雄と言われた男を恨み、更に知恵を付け邪な心に近付いていった。  そして数千年の時を費やしまた動き出した。  それに気付いた神王は、その神を再び罰する事にした。だが、自分の力だけでは戒める事は出来ない。  それならば再び英雄と称される者をこのサラディアーナに誕生させようと考えた。  それが英雄王ガルドだ。  そして、神王はガルドにその思いを託しその神を戒めた。  だが、その神はその事に懲りず、更に前よりも知恵を付け、以前よりも邪なる心に近付き、人間側に味方する神々や神王をも欺き事を起こした。  その神とは、建国と政治を司る神ダライアスだ。  まずダライアスは、人間側に味方する神々を操り、自分の味方に付けた。  ダライアスが事を着々と進める中、神王は未だに争い事が起きている事に懸念を抱いていた。また何かこの世界に良からぬ事が起き始めようとしているのではないかと。  そして、神王はその予感が当たらぬ事を願っていたが、このサラディアーナの行末が心配になった。  神王はマスタードラゴンに相談してみた。すると、マスタードラゴンは、再びこのサラディアーナに新たな王となる者が現れる事を神王に告げた。  その者とは、英雄王ガルドの子供であるブラットだった。  しかし、ダライアスはその動きに気付き、数名の神と自分の力を使い他の神々や神王、そしてマスタードラゴンの目をも曇らせた。  新たなサラディアーナを支配し王となる者……そして、過去に自分を戒めた人間の魂を宿し産まれた赤子のブラットに複数の術を掛けた。  そして、ブラットが王になる為の鍵となる者達にも術を掛けた。 「……神王よ。何やら、空気が淀んできている様に感じる」 「スカイワイズ、これは!?……まさか、ブラットの身に何かあったのでしょうか?」 「うむ、まだ見えぬ。いったい何者がこの世界を壊そうとしている?」 「我にも分かりません。ですが、この様な事をする神となると1人しか思いあたりません」 「やはり、奴か。懲りずにまたこの様な事を……だが、何故だ?どんなに戒め罰を与えても。更に力を付け自分の思いのままにしようとする?」 「確かに、あの者はここ数千年前から急激に力を付け、人間と魔族や人間同士の争いを引き起こし、尚且つ人間側に付く神々の信用をも得てきております」 「うむ、どうにか奴を止めねば……。このままでは、サラディアーナだけではなく、この我々の世界にまで影響が及ぶ」 「はい、それを考えると早く手を打たねばなりません。ですが、神王である我でも出来ぬ事があります。罰する事は出来ても完全に神を消滅させる事はできません」 「そうだったな。だが、どうにかして奴の考え方を正さなければならん」  そう言うとマスタードラゴンと神王は再び話を止め、サラディアーナを見据え考え始めた。  と、その時……天空の彼方にある世界の運命の歯車が、『ギィギィギィ、ガシャン!』と大きくズレる様な音を立てた。 「マスタードラゴン!?この音はいったい?」 「神王よ。この音はまさか、噛み合ったばかりの世界の運命の歯車がまた……いや、以前よりも酷くズレた様に思える」 「このままでは……これはブラットが倒れた事と関係があるという事でしょうか」  そう言うと、神王はサラディアーナ全域を見渡し、マスタードラゴンは宙を舞い様子を見ていた。  ……その直後……。サラディアーナ全域にて大きな地震が起きた。  そして、ここクレアノヴァ城ではこの地震に対し、騒ぐ者やそれらを冷静に処理する者に分かれ各自対処していた。 「グッ!?……この揺れはいったい?立っている事ができん!」  マグドは通路の床に座り手摺りにしがみ付き揺れが収まるのを待った。 「何て、大きな揺れなのでしょうか?まるで何かが起きる前触れの様な……」  そう言いながらマリアンヌは揺れが収まるまで頭を抱え床に伏せていた。  ……そして、その地震が起きる数分前の事。シャインスプラウト城の医務室では、フェリアがブラットの看病をしていた。 「ブラット。いったい貴方に何が起きたと言うのでしょう」  そう言いながらフェリアはブラットを看病していた。  だが、何故かブラットは先程より汗を掻き苦しんでいる様だった。  するとブラットが寝るベッドの左上の方にある、机の上に置いておいたブラットの杖の水晶が急に光を放った。  その杖は光を放ちながら宙に浮くと、ブラットの胸のあたりまできた。  そして、その杖は漆黒の光を放ち始めると、ブラットは更に苦しみ唸り出し、杖の水晶部分を覆っていた黒い羽が少し開いたその時。……大きな地震が起きた。  フェリアは苦しむブラットを守る様に覆い被さりながら、今、ブラットとこの世界に何が起きているのか考えていた。 「これはいったい何が起きたと言うのでしょうか?」
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