異世界へようこそ。

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 自分の会社で死人が出たなんて情報広がったら、世間は良いようには思わないだろう。知人の会社は出来たばかりの小さな会社だ。只でさえ問題に敏感なこの世の中、不祥事なんて起こしてニュースにでもなったりしたら中小企業なんて一巻の終わりだ。  この件について会社は何も悪くない。悪いのは、ばあちゃんの居室の窓が開いていた事に気付かずに招いた……俺の確認不足が原因なのだから。  そんな俺の心を知ってか知らずか分からないが、女性は俺の肩に触れて励ました。 「大丈夫よ。 彼の会社はこの一件で倒産する事もないわ」  いや、励ましたというよりも未来でも見えているかのような口振りだ。まるで俺の心や記憶を読み取っているかのような……だが何故だろう?根拠も何もない筈なのに、彼女は確信したように言う。 「ほんとう……ですか?」 「ほんとうよ!」    俺の不安にも動じない。堂々とした態度を貫く彼女の目は泳がない。  普通なら疑うところなんだろう。だが不思議と自身の胸に手を当て、自信満々に話す彼女の言葉は俺の心に届く。  先ほどから見せる彼女の摩訶不思議な現象を目の当たりしたからだろうか? 「安心なさい。確かに地球にはあなたの存在を保ったまま戻る事は出来ないし、大切な人達とも再会することも叶わない。でも、あなたはいま自由なのよ」  自由……自由か。女性の言葉は俺を終始励まそうとしてくれているものだった。そんな真摯な彼女の言葉の数々に、俺の心から彼女に対しての疑いという概念は完全に消えてゆく。 「他に質問はある?」 「……ばあちゃんは生きていて、知り合いの会社も倒産することはないんですね? それは、本当なんですね?」 「えぇ、そうよ! まちがいないわ!」
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