旅立ちの前に。

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 それは、この世界に住まう人だけでなく、魔神や神々をも巻き込んだ大戦。  戦争なんて想像するだけでも背筋が凍る感覚に陥る訳なのだが、現在(いま)はその戦争も終わり、「この世界にも平和が訪れたから、そこは安心してほしい」とララは話す。   だが、その戦争でこの世界に住まう魔神の数は大きく減り、その命、魂達は輪廻の渦に飲まれた。その渦に飲まれると、人や動物、植物と同様に魔神ですらその命は浄化されて、新たな世界で転生するらしい。  ただ命は浄化されて生まれ変わろうとも、前世で行った罪と罰までは拭えない。  その二つだけは生まれ変わりを果たしたとしても浄化されず、来世に引き継がれるというのだ。  例えば前世で許されざる所業を働いた者は、ここぞという時に運がない。  それは、元々持ち合わせている幸福度合いが違うというのだ。  何も悪いことはしていないのになんで私はこんなにも不幸なんだと、今世にて感じる時があるとしよう。  その原因は自身の行いも確かにあるだろうが、それだけではない。  業、前世での己の罪が今世で罰として引き継がれているからなのだ。  因果応報、それは必ず起こりうる物で、その罪と罰は前世だけに留まらない。  つまり、三條さんは魔神であった時に大きな罪を背負い、罰として地球に人として転生したとララは教えてくれた。  三條さん……彼女の人生は、面白みもなく、孤独であり、寂しいものだったらしい。  老人ホームに入れるという事は、ある程度の財力はあると思うのだが……お金があるからといって、幸せとは限らない。  三條さんの現在(いま)は重度の障害を持ち、身体が不自由になるだけでなく、自分の名前すら分からなくなってしまった。
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