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そんな彼女には当然ながら家族はおり、その人達が支えてくれるのなら救われる面もあるだろうが、思い返してみればその一番の身内ともいえる家族が面会に来たという記憶が、俺にはない。
それに気付いたのか気付かなかったのかは分からないけれど、ララは頷き再び語る。
ララは戦争が反対だった。人では決して辿り着けない領域なる力を持つ魔神ではあるが、ララは傲る事をせずただある現在を愛した。
そんな圧倒的な力を保持する魔神たちが人々と戦争を始めたのも、この世界での人は狡猾で残忍、他者を陥れて這い上がろうとする者達が増えた結果だ。
だがララは知っていた。人の中にも心優しき存在がいることを。
他者を助け、守り、優しく包むような心美しき人がいるという現実を。
だからこそ人々に怒り狂い始める魔神達を窘めるべく、戦いを止めるよう促した。
しかし、そんなララに対して同族である魔神達は怒りを露にする……その怒りは留まる事を知らず、戦いを止めるべく声を上げたララにまで牙を剥き始めたのだ。
身の危険を感じたララは致し方なく、戦争が終わるまでこの森に身を潜めていたと言う。
その怒りで我を忘れた同族の中に、三條さんもまた居たのだそうだ。
三條さんは、ララを忌み嫌った。
彼女達の関係、繋がりは深く、親友ともいえる間柄だったそうだ。
そんな相手に話を聞いてもらえない所か、命を狙われるという悲しき現実を前にララは涙を流した……それでも親友である三條さんに、三條さんだけには分かってほしいと切に願った結果、三條さんが命失われても尚、地球へと転生を果たした彼女の生涯を感じる事が出来るようになったのだそうだ。
三條さんの前世は人を大いに殺め、その神なる力で世界を恐怖に陥れた。
人の価値を俯瞰し、人の存在を嘲笑し、人の命を嗜虐に扱い、親友であったララをもその手で汚そうとした。
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