最後の奉仕。

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 介護の大変さを甘く見ていた俺は直ぐに疲て、俺にこの仕事は向いていないと考えてしまう日々が続いた。  何より一番きつかったのは夜勤。深夜になっても寝ない利用者は多く、またフットセンサーやサイドセンサーのオンパレード。  徘徊癖がある利用者も多くいた為、センサーが鳴っては夜通し走って寝かしに行くのだ。  またセンサーがあるという事は、歩行に不安があって急いで居室に向かわねば転倒してしまうリスクがあるということ。それを防ぐ為にも、センサーがベッドに備えられているという訳なのだ。  だから休んでいる暇なんてない。他のスタッフと協力したくても、この小さな老人ホームではスタッフの数も少ないのだ。  俺のフロアなんて、利用者が15人に対して俺一人で対応しなくてはいけない。  もちろんどうしても厳しいときは携帯電話で応援を頼むのだが、それでも余裕なんて言葉は俺には吐けなかった。  上司は「そのうち慣れるよ」と言うが、慣れる事なんてあるのだろうか?と疑問に思ってしまう。  休みの日に彼女に愚痴を溢すが、「仕事なんて大変なのは当たり前」と俺の話なんて聞く耳を持ってもらえない。  そんな日々のストレスが俺の心を確実に蝕んでいき、それがそのまま仕事で表れて俺の評判は悪くなっていた。  そんなある日の事だ。  朝食の時間になって利用者の数が合わないことを知った俺は、離床をしていないばあちゃんの存在に気付いた。  その為、未だ居室にいるであろうばあちゃんを迎えに行った訳なんだが……居室に到着したが、ばあちゃんがいない。
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