最後の奉仕。

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 どこに行った?と焦った俺は、居室の中へ入るとすぐに窓が開いている事に気付く。  胸騒ぎがして、急いでベランダへ向かい出ると、ばあちゃんがベランダの端から外へ出ようとしていたのだ。  ここは2階であり、転倒してしまうだけでも高齢者は命の危険にさらされる。  そんなばあちゃんがもし2階から落ちたりなんかしたら……俺は急いでばあちゃんの上着に手を伸ばした。  ばあちゃんの身体は半分以上、外に投げ出されている格好の為、手加減なんて出来ないしそんな余裕なんてものもない。   「頼む! ばあちゃん、こっち来てくれ!」  俺は無我夢中でばあちゃんを引き、片腕では厳しかったので両腕を使ってばあちゃんを力一杯、目一杯に引っ張った。  その甲斐あって、ばあちゃんをベランダに引き戻す事に成功する。   「よかった……本当によかった!」  心の声を叫び、俺は心の底から安堵したんだが、何故だろう?  急に景色が流れ落ちていく。  何かがおかしいと思い、「あれ?」と吐息混じりに呟いたが最後、グシャッ!と嫌な音が聴こえ俺の視界は暗転した。
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