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異世界へようこそ。
ーーー
湖だ。
目の前には広大な湖があり、俺はそれを前にして草の上に寝そべっていた。
「は?」
身体を起こして、周囲を観察してみる。
「は?」
は?という疑問の声しか出てこない。ここは一体なんなんだ?
周囲は緑一色。鬱蒼とした木々の中に俺は立っていた。俺の記憶が正しければ今日は出勤日で夜勤、その終わりも近付いてきていて……確か朝食の準備を進めていた筈だ。それで利用者の離床を行っていて、それで、それで……そうだ!
ばあちゃんは?ばあちゃんは無事だろうか!?
その俺の気付きに応えるように、ぼこぼこという音を奏で、広大で壮大な湖の底から一人の女性が姿を現した。
その女性は青色の長い髪と、水色の羽衣を着飾る幻想的で妖艶な雰囲気を纏いながら、俺に視線を向けている。女性の年齢は二十代前半、いや後半くらいだろうか?
そんな見たこともない女性を見ているだけで俺の心は魅了され、まるで魂を吸い取られそうな感覚に陥る。
「あなたが落としたのは、金の斧ですか?それとも銀の斧ですか?」
「はい?」
予想外の女性の質問に、俺の両目はぱちぱちと開閉させ、ぽかんと口を閉める事を忘れる。
そんな俺の反応が意外だったのだろう。女性は慌て始め、何やら謝罪してきた。
「あ、そっか……ごめんごめん。今のなしで」
「は?……いまのなし?」
理解が追い付かない俺をよそに、女性は再びぼこぼこと湖の底へと帰っていった。
てか、今のなしってどうゆうこと?というか、なんで謝罪した?
状況を何一つ飲み込めない俺は首を傾げて、女性のいなくなった湖を凝視する。
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