異世界へようこそ。

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「お~い? 青年、いや、青年ではないな。そこのご仁!……いや、そんなに偉そうでもないな。おい、そこのおっさん!聞いてる~?」  女性はいつの間にか湖から出てきており、俺の顔をパシパシと叩いた。 「あ、はい。大丈夫――て、おれ、おっさん!?」 「え? どう見ても若くはないよね?」 「確かに若くもないし、黒髪で年相応な俺はおっさんなのは分かるけれど……初対面の人におっさん呼ばわり……まぁ、いいや。ていうかさっきの話は本当ですか?」 「ん? ほんとうとは?」 「滅びたって……それって死んだってことですか? それは本当なのですか?」 「うん、ほんとだよー。だから私が少しでも元気になってもらおうと思って、地球で流行ってるアニメみたいに現れた訳! 金の斧と銀の斧、有名なアニメなんでしょう?」  言葉と態度が何一つ合っていない女性だったが、彼女なりの優しさ、気配りだったのだろう。夢かと一度は思ったが、湖に落ちて苦しいというのは夢にしてはおかしいと思うし、ここが夢ならば湖に落ちても苦しくない筈だろうし。  でも、そうか。俺はばあちゃんを助けようとして、2階のベランダから頭から落ちたのだろう。  2階の高さだとしても、打ち所が悪ければ即死してもおかしくはないだろうし……そうか、俺は死んだのか。  悲愴な感情が心を支配していく中、女性は淡々と語っている。 「それであれよね? あなたに斧を渡したら悪党が現れて、私に嘘をついてくるのよね?それで私が嘘つく人はダメ!と断って、それでその悪党は私を人質に……そこで斧を手に入れた資格ある者が悪党を倒す!って話よね?」
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