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その奇跡を一刻も早く知らせたくて、拓巳は家族ラインを開いて久し振りに長い文章を入れた。
ーーー
「4日前から調子がいいみたいで、少しの物忘れはするけど普通なんだよ。ずっと拓巳さんと呼んでくれる。食事も毎日、三食作ってくれて、洗濯も完璧だし、前の愛子に戻ったみたいだ。」
『本当に?回復してるのかな?』
『私、昼過ぎに行く!』
『じゃあ、仕事終わりに寄ります。』
『あ、じゃあ、俺も夕方行く!』
「みんな来たら愛子が驚くよ?」
ーーーー
笑いながら画面を見て、拓巳は洗濯物を干す愛子を見つめた。
「手伝うよ。」
「ありがとう。二人分だから少ないけど、いいお天気だものね。」
ベランダに風が吹いて、愛子の髪が遊ばれる。
「あ、そうだ。美容室行く?長くなったし。」
記憶が曖昧になるから髪は家で切っていたが、調子がいい今なら行けると拓巳は思い付いた。体の負担などを考えて少し迷ったが折角ならプロに切ってもらった方がいいし、愛子の気分転換にもなると考えた。
「行きたい!でも…。」
笑顔の後、不安そうな顔をした。
「一緒に行くし、大丈夫だよ。カットだけなら時間も掛からない。明日、予約出来るか聞いておくね。」
「ありがとう拓巳さん。嬉しい。久し振りな気がする。どうかな?」
「うん、久し振りだね。」
笑顔の愛子が堪らなく愛おしく、何をしていても幸せな時間だった。
直ぐに一番近い美容室に電話を入れて、予約をお願いする。
明日の午前中、開店間も無くの時間なら空いていると言われて予約を入れた。
お昼になり、少し遅めの昼食を食べていると愛実が鍵を開けていつもの様に勝手に訪問。
「こんにちは〜!お母さん、いる?」
「いないと思うなら来ないでよ?」
直ぐに突っ込まれてキョトンとしていた。
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