最後の団欒

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翌日は午前中10時開店に合わせて行く為にいつもより早起きをした。 6時には起きて、コーヒーを飲んでいた愛子に驚きながら、嬉しくも思った。 「おはよう拓巳さん。コーヒー飲む?」 「おはよう愛子。お願いしていい?」 「ええ、座って?朝食はまだ支度してないの。今日はパンでもいいかな?」 話しながら愛子はコーヒーを淹れて、カップを拓巳の前に置いた。 「いいよ。ひと息ついたら焼いておくよ。一枚でいい?」 「ええ、お願いね。じゃあ、洗濯機回してくる。あ、後で冷蔵庫チェック、付き合ってね。」 「買い出しメモだな?分かった。」 優一夫婦、愛実夫婦と子供一人(もう一人は欠席)、秀一夫婦と子供二人、9人が珍しくこの家に来る。 張り切って料理をすると昨夜からいろいろ考えていた様だった。 忘れてしまうから、メモをして、と何度も頼まれていた。 この一週間が幸せすぎて、拓巳は夢ではないかと思う事が何度もあった。 それを思わず呟くとすぐに愛子に頬を引っ張られていた。 それさえも幸せなのだから、愛子が何をしても言っても全てが幸せなのだ。 美容室に行き、数年振りに愛子はボブカットになった。 ナチュラルボブと言われたが、違いは良くわからなかった。 「染めますか?」 と聞かれて、愛子は笑顔で大丈夫です、ありがとう、と答えていた。 「疲れてない?」 美容室を出てから聞くと、笑顔で平気と答えて、拓巳に訊き返す。 「拓巳さんこそ、疲れてない?待ってるのも疲れたでしょう?ごめんね?」 「いや?綺麗になって行く愛子を見てるの楽しかったよ?」 手を繋いで答える。 「汚かったみたいに言わないでよ。」 と悪戯な顔で言われて、慌てて訂正する。 「そういう意味じゃないよ?疲れてないならこのまま買い物行けそう?」 「ふふっ…うん、行こう。メモ持って来た?」 「大丈夫。好きな様に指示してね。仰せのままに動くから。」 「凄く贅沢ね?頭も軽くなってシャンプーもすごく気持ち良かったし、その上拓巳さんがエスコートで荷物持ちしてくれてお買い物なんて贅沢だわ。」 愛子が笑顔で幸せそうで、嬉しそうで…拓巳さんと呼ばれるだけで泣きそうになる。 「拓巳さん?どうかした?」 「っ…ん、ううん、なんでもない。行こう。」 涙を堪えて必死に堪えて、二人でゆっくりとスーパーへ向かった。
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