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「2月の愛子の誕生日、みんな集まれるといいのだけどね?平日だから無理かな?」
「仕事終わりに寄れるけど全員は無理かな?子供達は予定もあるだろうし。」
申し訳なさそうに優一が言うと、愛子も同意する。
「仕方ないわよ。仕事があるんだから。おばあちゃんの誕生日なんていちいち祝ったりしないわよ。忙しいのに顔を見せてくれるだけで有難いわ。」
「そう言えば、前に来たより部屋がスッキリしたね?」
「あ、それ思いました。お茶碗も随分減ってますけど、割られました?」
優一の言葉に、お茶を運んで来た詩織も同意して、愛子に聞いた。
「秀一達が来るなら荷物も増えると思ってね?二人分で良いからいらない物は片付けているの。誠一さんの荷物を入れた部屋も片付けているから、欲しい物があるなら持って行きなさい。」
「そっか。じゃあ、帰る前に覗いて行くよ。愛実には?」
「言ってあるわ。お父さんじゃあねって…言われたわ。」
「あいつ…。何が欲しいんだか。」
お茶を啜り優一が言い、愛子と二人で笑い合った。
お正月は去年とは違い、拓巳にも優一にも幸せに過ぎた。
何年か振りの愛子の手作りお節も豪華に披露され、ぱちくりしていると、
「なに?何かご不満?」
と、愛子に突っ込まれて、二人同時に首を振っていた。
三日には秀一家族が、五日には愛実家族が年始の挨拶に来てくれて、愛子は忙しく動いていた。
それぞれに赤飯だ、ちらし寿司だ、いなり寿司だとおかずも沢山、タッパーに入れて持たせていた。
そして2月の誕生日を前に、電池が切れた様に愛子は倒れた。
入院して様子を見ることになった。
病室のベッドで、目を開けた愛子が「誠一さん」と呼ぶのだと、拓巳は覚悟していた。
(目覚めて元気ならそれでいい。起きて、一緒に帰ろう。)
祈る様に手を握り、ベットの横に付き添っていた。
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