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夜遅くに握っていた手がピクリと動いた気がして、うとうととしていた目を開ける。
「………あいこ?」
ピクッと愛子の指が僅かに反応して、目元に注目していると、ゆっくりと閉じられていた目が開いた。
「愛子?分かる?」
約一日、寝ていた事になる。
目を開けた愛子は、真っすぐに拓巳を見ていた。
「愛子?」
「た、くみさん?ここ……あれ?家じゃない?」
ほぉ…と息を吐いて、もう一度確認をする。
「病院だよ?家で倒れたんだ。覚えてる?昨日の夕食の後…暫くは入院だって。倒れた時、頭を打ってなくて良かったって、先生が…。」
「拓巳さん、ずっと、いてくれたの?昨日から?体に良くないわ。帰ってちゃんと…寝て?」
「許可はもらってあるよ。一緒にいる。」
ぎゅっと手に力を込める。
「心配掛けちゃったわね?ごめんなさい。」
「いや、俺の方こそ。愛子が元気で昔と変わらないから、甘えてごめんな?体力は落ちてるって先生にも怒られた。」
「ううん。私がしたいからしてただけよ?冷凍庫にね、カレーとハンバーグがあるから、食べてね。ご飯も一人分、五食分位はあったと思うの。」
「俺、ここにいるって!」
と言うと愛子にちょっと睨まれる。
「着替えもお風呂も入るでしょう?あと、私の着替えも持って来て?一度帰ってコーヒーでも飲んで来なさい!コレは命令ですよ?」
「…分かった。じゃあ…朝になったらそうする。」
膨れた顔を見せる。
「わぁ、ご不満、て感じですね?」
と言われて、思わず吹き出した。
「そうっすね…ご不満っす。」
と答えると、今度は愛子の口から笑い声が漏れた。
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