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次の日には子供達が朝から勢揃いして、付き添いを愛実にお願いして拓巳は一度家に帰る事にした。
丸一日付き添っていたから、お腹も空いたしお風呂にも入って着替えて、と考えてだった。
「愛実は夕方まで居てくれるんだよね?」
「うん、拓巳ちちが戻るまでちゃんといます。安心して。」
「お願いします。優一君、秀一、わざわざありがとうな?早めに仕事戻れよ?」
「はい。拓巳さんも一日、お疲れ様でした。」
「あ!父さん送るわ。俺車だし、マンションの前通過する。じゃあ、母さん、父さんと行くね?また仕事終わりに顔出すから。」
秀一が言い、愛実に後をよろしくと言うと、愛子も笑顔で見送る。
「無理しなくていいわ。拓巳さんも無理しなくて良いから、来るのは明日でいいのよ?運転気を付けてね。お父さんをよろしく。秀、ありがとう。」
「うん、じゃあまた。」
「じゃあ…愛子。夕方戻るからね。」
「聞いてた?明日でもいいよって言ったわよ?」
「戻るからね!」
「はいはい。いってらっしゃい、拓巳さん。」
くすくすと笑う愛子に見送られて拓巳と秀一は病室を後にした。
「相変わらずだなぁ、拓巳さん。」
優一が笑いながら愛子を見ると、優一を手招きしていた。
ベッドに近寄ると、封筒を枕の下から出して渡された。
「なに?」
「銀行の暗証番号が書いてある。」
「は?」
「明日にでも愛実とマンションに行って、誠一さんの荷物の部屋から、誠一さんが使っていたアタッシュケースの中を見なさい。優一と愛実が引き継ぐべき物が入っているから、指示通り分けなさい。」
急に言われて、優一と愛実はきょとんとした顔で愛子を見ていた。
「母さん?」
「誠一さんの物は二人で、その代わり、拓巳さんの物はどうか秀一に。マンションは拓巳さんが良い様に…どうかマンションを取る事のない様に。これはお母さんのお願いで遺言よ。」
優一と愛実は呆然として愛子の話を聞いていた。
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