複雑なんだね?

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ドアが開いて拓巳が愛子に気付く。 「愛子!」 思わず大きな声が出て自ら口を塞いで、シーッと言いながら笑顔を見せた。 (えっ?) 呆然とする愛子に両腕が絡み、抱きしめられた。 「ごめん、遅くなって。あぁ、やっと帰れた。家だ、愛子だ!寝てていいのに。でもすぐ会えて嬉しいなぁ。」 拓巳の言葉にきょとんとしながら声を出した。 「よ、酔ってる?」 「ちょっとね?記憶はあるよ?大丈夫。」 愛子から離れて答えて笑顔を見せた。 少し泣きそうになるのを堪えて愛子は背中を向ける。 「お、お腹空かない?」 「うん、少し空いたかな?」 「夜食にお茶漬けする?」 歩きながら気付かれない様に涙を拭う。 「いいの?」 「いいわよ?お茶漬けよ?期待しないでね。私も軽く食べようかな。お腹空いた。」 「いいね。今日の秀一の報告聞かなくちゃね。」 台所で手を洗い、拓巳は愛子に笑顔を向けた。 冷蔵庫を開けながら、愛子はまた泣きそうなのをグッと飲み込んでいた。 お腹が空いたのも本当で夕飯は殆ど食べていなかった。 悪びれた様子もない拓巳の笑顔を見て安心してお腹が空いてきたのだ。 温かいご飯にお茶を用意して、漬物を冷蔵庫から出した。 「あ、そうだ。常備菜あった。それと梅干しと…キムチでどう?」 思い出して冷蔵庫から出してテーブルに置くと拓巳は喜んだ。 常備菜はネギと椎茸の味噌和え。 梅干しや漬物も順に少しずつお茶碗に入れて、美味しそうに拓巳は食べ始めた。 「美味い!愛子はこういうなんていうの?メインではないけどしっかり味があってさり気なく美味いよな?」 夫が妻を褒めるのは、大体、罰が悪い時か後ろめたいことがある時だろうと思うが、拓巳に限ってはそうではなかった。 一緒になってからその前から、いつも褒めてくれていたからだ。 お礼を言い、今日の秀一の話をする。 保育園に行きお友達と絵を描いたお母さんの絵で笑った。 そんな愛子の顔を見て拓巳も微笑む。 そして徐に、もう昨日となった出来事を話し始めた。
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