大山早苗

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パートの辻井と二人で昼休憩を取っていたら、また大山が顔を出した。 休憩室の前を通過して事務所に入って行くのが見えた。 「あらあら、また来ましたね?エリアマネージャー。うちの店舗ってそんなに問題店舗でした?」 辻井は呆れた様に囁いた。 「新しく就任したばかりで心配なんじゃないですか?」 と笑って答えると辻井は不思議そうな顔を愛子に向けた。 「笹嶋さん、社員さんなんだし、仕事も出来るのにどうして店長に抜擢しないのかしらね?会社って何を考えているのかしら?若いからってあんな高飛車なエリアマネージャー、嫌ですけどね。」 何度か顔を出しては、社員以外に横柄な態度で接する大山に、店のパートもアルバイトも顔を見れば嫌そうな表情を見せる様になっていた。 愛子は五年前、秀一を産んで復帰する際に、店長を降りる願い届けを出し、半年後、引き継ぎをして今の店に異動して来た。 愛子が店長をしていた事は、店長も知っているが、若い社員やこの店のパートさん達は知らない。 愛子もいちいち言わない。 店長が長くなれば本社に行く人も支社に行く人もいるし、同じ店舗にずっといる事はない。 休憩室の前を大山が通過して行く。 チラッと中を見たので、愛子と一瞬目が合った。 「今日はすんなり帰りましたね。この前は接客がなってないとかで、自分がお客様役するからとか言い出して、そんなの営業時間外にするべき事ですよね?」 怒り気味に言われて、愛子も驚いて訊き返す。 「お客様役って、営業時間に?お客様がいるのに?」 「ええ。笹嶋さんはお休の日ですね。確か、旦那さんとお出掛けするって。アルバイトの三田さん捕まえて可哀想でした。彼女、23歳で採用試験受ける予定なんです。だから意地悪です。絶対!」 「……意地悪って。採用試験に受かったら同じ社員でしょ?辻井さんの話では社員にはひどい事言わないんでしょ?」 辻井さんの話、と付けたのは愛子自身は大山とは話す機会は一度もなかったからだ。 「だからです!正社員になったら意地悪出来ないでしょ?自分より若い子を苛めたいんですよ、そういう女、居ますよ?」 「若いわねぇ。」 愛子が呟くと辻井は何がですかと聞いて来た。 「自分より若いのを理由に苛めていたら、私は全員苛めなきゃいけなくなるわ。大変よ?若いのね?少し羨ましいわ。」 笑顔で愛子が言うと、辻井もケラケラと笑った。
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