大山早苗

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休憩室を出て、事務所にタイムカードを通しに行く。 キャッシュカードの様な物で機械にスッと通すと、認識される物だ。 「笹嶋さんのご主人って本社の人だって店長に聞いたんですよ。この前、お休みした時。ご主人と出掛けるって話をしたら言ってたんですけど、本当ですか?」 「ええ。本当よ?」 「職場恋愛ですか?」 「んーどうかな?同じ店舗で働いてた時はそういう感じではなかったから。」 私は結婚していたし…という言葉を飲み込んだ。 「お休み合わせて取ったんですか?」 「そうよ。子供の洋服とか誕生日プレゼントをね、一緒に買いに行ったの。恒例なのよ。共働きだと時間が合わないから。」 「へぇ、仲がいいんですねぇ、結婚して何年です?上のお子さん大きいって言ってましたよね?10年以上経っても仲良しなんですねぇ。」 まだ六年、とは言えなくて苦笑していた。 話しながら店に出ようと廊下を歩いていると、前から大山が歩いて来た。 端により頭を下げると、通りすぎる時にキツイ目を向けられた。 「何!あれ?道開けたのに、あの態度!私はパートだからいいですけど、笹嶋さんは社員さんで勤続年数で言ったら先輩じゃないですか!」 「いいわよ、早く店に戻りましょう?」 前を怒りながら歩いて行く辻井の後ろを歩きながら、少し振り返る。 辻井との会話が聞こえたのだろうと愛子は思った。 あのキツイ視線は明らかに愛子に向けられていて、それが意味する事は一つだけだった。 (一緒に買い物に行った…が気に入らなかったかな。) それはつまり、大山が拓巳に好意を抱いていることで間違いない事を示していた。
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