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「ただいまー!お母さん、私のご飯あるぅ?」
パタパタと明るい声と共に愛実が帰宅すると、秀一はお姉ちゃんにまっしぐらに走って行く。
秀一のお出迎えに廊下で二人の明るい声が響く。
「ほら、愛実は手洗い!秀ちゃんはご飯の準備!椅子に座るよ。」
「「はぁい」」
「返事だけはいいのよねぇ?」
笑いながらダイニングテーブルの子供用の椅子に、秀一を持ち上げて座らせる。
愛実も台所に来て、自分の食事の準備をする。
「拓巳ちちは?」
「今日は遅いって。」
「あれ?あれあれ?また飲み会ですか?」
お味噌汁を注ぎながら楽しそうな顔を見せる。
「違うわよ!秀一が手を出すから、先に座って。ご飯注ぐから。」
「はぁい。いただきまーす。」
二人の様子を見ながら、愛実の前にお茶碗を置いた。
「ね、今日は遅くなるって言ったの愛実もでしょ?お夕飯いらないって…。」
「うん……。」
お味噌汁の途中で返事をして、一口飲んでから愛実は続けた。
「喧嘩した。本当は一緒にご飯食べて帰る予定だったけど、映画見て喧嘩した。」
「それは愛実の方が、あれ?あれあれ?ですねぇ。」
微笑んで愛子が言うと、愛実は頬を膨らませた。
予想外の愛実の早い帰宅に、久し振りに愛実と秀一の三人での食卓になった。
愛実が大学生になってからは帰りも遅く、早く食事する秀一とはどうしても時間が合わなかった。
愛実がいてくれるので、秀一のお風呂の後もバスタオルを巻いて慌てて出る事もなかった。風呂場の出口で脱衣所で待つ愛実に秀一を渡した。
「お母さん、たまにはゆっくり浸かって?拓巳ちちいてもお風呂は最後でしょ?一番でのんびり、ね?」
と言われて、お言葉に甘えて秀一をお願いする。
秀一の性格は甘えん坊でやんちゃ。
ただ、何でも根気よく一生懸命にやる。
パジャマも一人できる、と言い始めると時間が掛かっても一人で満足するまでやる。
そういう時は出来るだけ、時間が許す限りは見ててあげて、と家族には話している。
優一はのんびり屋で、自分でやる!とはあまり言わなかった。
のんびりしてるくせに、活発だった。
愛実も甘えん坊。
小さな頃は大人しくて、自己主張も優一の影に隠れてほとんどなかった。
(それが今や、あれだ!)
自己主張は強く、言いたい事はスパスパ言う。
湯槽に浸かりながら、愛子は思い出し笑いをしていた。
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