【嘘と真実の狭間で】

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【嘘と真実の狭間で】

誰かに突き飛ばされた、そう認識したときにはすでに俺の体は宙をまい、次の瞬間身体中に激痛が走った。若い女性の悲鳴を聞いたのを最後に俺の意識は完全に途絶えた。 *** 次に目を覚ましたとき、俺はすべての記憶を失っていた。自分がだれであるか、どうして病院にいるのかさえわからなかった。電車のホームへ下る階段で俺は足を踏み外し転倒したのだと医師から説明され、突如落ちる瞬間の記憶だけが鮮明に甦る。それと同時に誰かに強く背中を押され「死ね」と確かに殺意をもって囁かれたのを思いだし背筋が凍る。 犯人が誰なのか記憶のない俺には検討もつかない。誰も信用できない。殺し損ねたと知った相手はまた俺を殺しに来るのだろうか。 この日から俺の恐怖と疑念の日々が始まる。
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