【地下牢の妾】

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【地下牢の妾】

ゆりかごに揺られる赤子は想い人と同じ赤い瞳をしていた。それが愛おしくもあり、恨めしくもあった。 男はその赤子の首に手をかける。 「ごめん、ごめんね」 愛する人の子供なら同じように愛せるだろうなんて、心の狭い俺には無理だ。この子供を殺して俺も死ぬ。そう決めた。 流れ落ちる涙は身勝手な俺の都合で生を終わらせることになる赤子への罪悪感からか、それとも想い人が他の女性と愛し合っていたことへの悲しみからか。 その時、赤子が笑った。この世の不幸などすべて浄化されるようなその清らかな笑みに男は思わず脱力する。きゃっきゃと笑って男の指をつかんだ赤子に毒気を抜かれる。 男はその赤ん坊を抱きかかえ、夜の街へと消えた。
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