【地下牢の妾】

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*** すべてを聞いてもレオンを恨む気持ちにはならなかった。 それどころかレオンの心情を想うと心が痛む。自分の愛した人と女性の間に生まれた自分をレオンは今まで何を想って今日まで育ててきたのだろう。憎しみもあっただろう、恨みもあっただろう。けれど今日までレオンの愛を感じない日はなかった。 腹立たしいのはこの国の王である自分の父親、ライアンだ。 レオンに愛を囁く片手に別の女と関係をもって、しかもその子供の世話係によりによってレオンを託すなんて、どうかしてる。どれだけレオンを傷つければ気が済むのだ。 そして自分を連れて王宮から逃亡したレオンを王宮へと連れ戻し、地下牢につなぐ王の所業はもはや怒りしか湧いてこない。 今更ふってわいた真の父親に対して親子の情など当然ない。 俺は従者たちを振り切り、なんとかレオンの閉じ込められている地下牢へと向かう。 共に逃げよう、今度は王の目に届かないもっとずっと遠い土地に。 そうしたらまた喫茶店を開こう。 楽しい未来を想像して、ロイドは決意を固める。 長い階段を降り、暗い地下牢に降り立つ。点々とともる蝋燭の火を頼りに長い地下牢の最深部まで進んでいくと、次第に呼吸音が聞こえてくる。 レオンの気配に足を速めたロイドは響いてくる呼吸音の荒さと時折漏れるような艶めかしい嬌声に嫌な予感がした。 最深部の突き当りの地下牢から妙な水音と二人の人間の息遣い、肌がぶつかる音が響く。 ロイドはその光景を実際目の前にして、しばらくの間放心した。壁に手をついたレオンはロイドの気配には気づかない。しかし、そのレオンの腰に手をそえたライアンはロイドにちらりと視線を向けた。そしてその行為を見せつけるかのようにさらに腰を速めた。 ロイドはライアンを射殺すような強い怒りの視線を向ける。 絶対にレオンをこの男から解放する。レオンをこの男には渡さない。 沸き上がるライアンへの怒りと敵対心、レオンへの独占欲と執着はもはや親愛や恵愛というにはあまりに重々しくい歪であることにロイドはこの時初めて気づいた。 【地下牢の妾 《終》】
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