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最初は雑談しながら展開していく。俺にババはない。
「俺が勇者で、パーティーにいたのがモルディンと、エルフさん」
「エルフさんだなんてそんな。エフィーリアよ。エフィーって呼んでたわ」
三百歳越えなので、先輩すぎる。俺は「はあ」と漏らした。そして隣の母のトランプを一枚もらう。母も参加するんかい。
「私はお前を常に支えていた。魔法使いだ。いつだって援護をしていた。癒しも必要だったからな」
妖艶にほほ笑む。すまん、美人過ぎてなんかこわい。長い爪がある指で隣のエフィーのトランプをとる。
見る限り、ババが来たようだ。めちゃくちゃシャッフルしている。
ここに来て、父が目を見開いた。そして、両手を高く掲げてトイレで気張っているような顔をした。
どうした、どうした!?
地面が大きく揺れた。俺はテーブルに伏せた。風が吹き荒れた。トランプは離さない。
そして、また一人増えた。
× × ×
「やっぽー、勇者! 元気元気?」
眼鏡をつけた、これまた美人。背中に狂戦士なみの大剣を背負っている。いやいや、こいつが新の勇者じゃね? ポニーテールをした健康的なかわいらしさ。
「ちっ」
モルディンとエフィーが舌打ちした。父が説明する。
「この女性は第一の村からずっと一緒だった女剣士。ザギだ」
「なるほど」
それはこの二人にとって強敵だろう。こいつは正規ヒロインっぽいかも。
「勇者、心配したよ。毒であたって死ぬとか本当馬鹿―」
「俺、死因が毒なの。間抜け……」
「間抜けはあんただよ!」
母ちゃんが俺をはたいた。覚醒してまだ無表情に戻る。どんなシステム?
ザギが正座して、トランプに加わる。大剣を抱えたザギ。俺。モルディン。エフィー。母。なんだこれでトランプがまわっていく。
トランプは一度、回収して配りなおした。ババは俺にあるので悟られないようにしないと。
「スペードの12。おおダイヤの12!」
俺はババがあるが、もうすぐあがりそうだ。ババ抜きって地味だよな。
「ババ抜きであるから、お前が異世界に強制送還されるべきだ」
「何を言ってるの。胸でか女が。お前も人間的にはババだろうが」
「うるさいっ」
「懐かしいですー、このやりとりー」
ザギは途中参加したのに早く終わりそうだ。すごい運。空気読めない感じだけど能力ありそう。
「あ、みんなご飯食べていくでしょ?」
母がゆっくり立ち上がった。そして、台所に行って、何か作りにいった。
母の手元にはトランプがなかった。
ん? 俺は微かに違和感を感じた。
だって、この部屋出られるの?
母ちゃん、トランプあがったんか?
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