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俺、慣れてないんで
この駅からだと千坂は外回り、百川は内回りの電車に乗る。
それなのに百川が乗る電車のホームへと連れていく。
「ちょっと、俺の部屋にくる気ですか?」
「あぁ。この駅ならお前の部屋の方が近いし」
どうして部屋についてくるのか、その理由に嫌でも気づいてしまう。だから顔を背けてこれ以上は聞きたくないというていを作る。
千坂もとくに話をつづけることなく黙って車窓から暗闇を眺めていたが、電車を降り、ホームを出て少し歩いた頃だ。
「なぁ、わかっているんだろ?」
と言い出した。
「知りません」
耳を掌で押さえて聞きたくないというジェスチャーをするが、その手をつかまれ耳から離れてしまった。
「女の子にもてる俺が、お前の部屋に行こうとする理由」
「聞きたくないから知らないふりをしているのにっ」
それを聞いてしまったら、確実に千坂との関係がかわってしまう。
「俺にとっていい先輩、それだけじゃダメんですか?」
「あぁ。ダメな部分を見ても変わらなかった。本当の俺を見てくれるのはお前だけだ」
手をつかんだまま、ついばむようなキスをされて眉間にしわを寄せた。
「真っ赤だぞ、顔」
「あんなことを言われたら、こうなるでしょうが」
いつもキラキラとしてかっこいい。見た目に気を使っているのは誰でも気が付く。
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