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資料倉庫でのやりとり
高いところに荷物を置くときに頼まれることがあり、 この時ばかりは女性にもてる。
百川に対してデリカシーをどこかに置いてきてしまった千坂が、
「もてもてですなぁ」
と声をかけてくる。
百川はこんな用事がない限り頼りにされることのないが千坂は違う。たいした用事でなくても話すきっかけが欲しい女子はお願いをしてくるのだから。
「嫌味ですか?」
「いや、お前は気が付いていないだけだよ」
と何かを数えるように指を曲げた。
「気が付いていないって何をですか」
「遊ぶなら俺みたいのがいいけれど、結婚するなら断然お前だろ。親切で優しい、しかも家事だって手伝ってくれる。こんな優良物件はないもの」
「それはないですよ」
逆にひかれているのではないだろうか。だからこの年になっても彼女がいないのだから。
「俺は好きだぞ」
「そりゃ、そうでしょうね」
よりどりみどりだというのに、なぜか百川を選んだのだから。
「ま、女子たちがお前のことをいくら好きになろうが渡さねぇよ」
しかも独占欲が強いのだから、これは心を打たれてしまうだろう。
「お、真っ赤」
「この、タラシが」
方に腕を回して顔を近づけてくる千坂に百川は引き離すように顔を押した。
だが所詮相手にはかなわない。
気持ちよくなるキスはお手のもの。舌を絡ませ唇をついばみ手が怪しい動きをしはじめた。
気持ちよくてとろりとしはじめたとき、はたっと気が付く。
「ここ会社だから」
今度は力いっぱい顔を押すと、「えぇ~」と不満そうな声をあげるが表情は楽しそうだ。
「今度会社でこういうことをしたら、当分エッチなことは禁止ですからね」
そうでもしないと彼は何度でも仕掛けてくるだろう。
「はーい。百川といちゃいちゃできないのは嫌だしな。えっろいのはお家で我慢しまーす」
ぺろりと唇を舐めて嫌らしい目で百川を見る。これは今晩頂きますという表情だろう。
しつこく、いやらしく。そしていじわるに。
どこもかしこもなめまわして。ほしいのにいれてくれなくて、鳴かされて、泣かされる。
「ち、千坂さん、明日も仕事、ですからね?」
そう、今日は週はじめ。真っ青になりながら千坂を見れば、すっかりお仕事モードになっていた。
あぁ、帰ったら天国と地獄がまっている。
とんでもない男に惚れられてしまったものだと、すでにお疲れモードな百川だった。
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