434人が本棚に入れています
本棚に追加
ハッピーバレンタインデー
テーブルの上に置かれているチョコレート。
かじったあとがあるのだが、口に合わなかったのかそのまま放置されている。
食べたものすら片付けないのはいつものことだが、もったいないので千坂がかじったところは割って口に入れ、残りはアルミホイルにくるんでおいた。
「百川ぁ、それ食ったな」
いつの間に背後に背後にいたのだろう。驚いて肩が上がる。
「千坂さん、静かに背後に立たないでくださいよ」
寝起きの千坂はひげが生えてぼさぼさの髪をしている。普段はモテモテな彼も普通の男に見えて、百川は意外とこの姿が好きだ。
「そんなことよりも、食ったよな、チョコレート」
ぬっと後ろから手をだして包んだチョコレートをとんと指でたたいた。
「千坂さんがかじった所だけですよ。とっておくの嫌でしょ?」
「なぁ、ばい菌だと思ってる?」
「……で、食べたからなんだというんです」
「おまえなぁ。いや、まぁ、いまはそれはおいておくか」
と百川の肩をつかんで振り向かせてニッコリと笑った。
なんだろうか、嫌な予感しかしない。食べずに捨てればよかったと後悔しはじめた所に、
「カードが置いてなかったか?」
そう聞かれて首を傾げた。そんなものがあったのかとテーブルを見るが何もない。床に落ちたかと視線を下へと向けるとそこに白いカードが落ちていた。
「あ、これです……て、なんだこれ!!」
カードに書かれていた文字に百川の表情がかたまった。
ハートがたくさん描かれており、Happy Valentine's Dayと書かれていて、その下に、
<ホワイトデーに裸エプロンよろ(n*´ω`*n)>
と、手書きで付け加えられていた。
「な、これ」
「食ったよな、チョコレート。ホワイトデーが楽しみだわ」
口角を上げ、ハッピーバレンタインデーと口にすると、百川の唇にキスをした。
最初のコメントを投稿しよう!