ハッピーバレンタインデー

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ハッピーバレンタインデー

 テーブルの上に置かれているチョコレート。  かじったあとがあるのだが、口に合わなかったのかそのまま放置されている。  食べたものすら片付けないのはいつものことだが、もったいないので千坂がかじったところは割って口に入れ、残りはアルミホイルにくるんでおいた。 「百川ぁ、それ食ったな」  いつの間に背後に背後にいたのだろう。驚いて肩が上がる。 「千坂さん、静かに背後に立たないでくださいよ」  寝起きの千坂はひげが生えてぼさぼさの髪をしている。普段はモテモテな彼も普通の男に見えて、百川は意外とこの姿が好きだ。 「そんなことよりも、食ったよな、チョコレート」  ぬっと後ろから手をだして包んだチョコレートをとんと指でたたいた。 「千坂さんがかじった所だけですよ。とっておくの嫌でしょ?」 「なぁ、ばい菌だと思ってる?」 「……で、食べたからなんだというんです」 「おまえなぁ。いや、まぁ、いまはそれはおいておくか」  と百川の肩をつかんで振り向かせてニッコリと笑った。  なんだろうか、嫌な予感しかしない。食べずに捨てればよかったと後悔しはじめた所に、 「カードが置いてなかったか?」  そう聞かれて首を傾げた。そんなものがあったのかとテーブルを見るが何もない。床に落ちたかと視線を下へと向けるとそこに白いカードが落ちていた。 「あ、これです……て、なんだこれ!!」  カードに書かれていた文字に百川の表情がかたまった。  ハートがたくさん描かれており、Happy Valentine's Dayと書かれていて、その下に、 <ホワイトデーに裸エプロンよろ(n*´ω`*n)>  と、手書きで付け加えられていた。 「な、これ」 「食ったよな、チョコレート。ホワイトデーが楽しみだわ」  口角を上げ、ハッピーバレンタインデーと口にすると、百川の唇にキスをした。
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