その先は知りたくないです

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その先は知りたくないです

 千坂さんの行動がわからない。  恋愛の経験値があまりになさすぎて、百川には理解できないだけかもしれない。  昼休み、百川は同期で友達の五十嵐(いがらし)を頼ることにした。社長の息子で、頼りがいのある男だ。 「俺、千坂さんがわからん」 「そうなの? すごく解りやすいと思うけどな」 「どこが」  全然わからないから悩んでいるのに。 「まぁ、嫌なことをされたら俺に言いな」  と背中をぽんと叩かれる。 「あぁ、その時は頼む」 「まかせろ。さ、これを食べて元気におなり」  五十嵐には甥っ子がいて、作ったおやつをお裾分けしてくれる。これがすごく美味いし、元気が出る。 「ありがとう」  それをもって席に戻ると、 「いいものを持ってるな」  と千坂が体を寄せてきた。 「五十嵐に貰いました。食べます?」 「くれ」  一つ取り出して差し出すが、受け取らずに口を開いた。 「え?」  それは食べさせろということだろうか。 「いやいや、自分で食べてくださいよ」  というが、その手をつかんで口に運ばれてしまう。 「うん、うまい」  満足げに笑う千坂はかっこよくて心臓が高鳴った。イケメンの破壊力は半端ない。  掴まれていた手を引いて離すと、千坂の手が菓子を摘まんだ。 「ちょっと、それは俺のぶ……ぐっ」  口の中へと突っ込まれて喉を詰まらせた。
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